姫路城に続け? 外国人観光客への二重価格が世界標準なわけ 「土足で本堂」に対応するコストは
二重価格については賛否の声があるが、この点についても中井氏は、 「日本で二重価格を導入したところで、デメリットと呼ばれるようなことは起きません。実際、二重価格への反対意見としてメディアに上がるのは、外国人がかわいそう、という声です。これまで二重価格にしてきていないのは、日本人特有のおもてなしの精神が影響しています」と指摘する。「来てくれたから」「良いサービスをしたい」といった日本人らしい思いが、二重価格を押しとどめてきたとの考えだ。 世界的には当たり前、という以外にも二重価格を採り入れた方がいい理由があるという。 「姫路城もそうですが、各自治体、観光地は非常にコストがかかっていると思います。現在、観光地が設定している料金は、日本人観光客の数を想定して作られています。仮に外国人観光客を含めていたとしても、ここまでの数とは想定してなかったでしょう」 どういうことだろうか? 「外国人観光客の場合、多言語やマナーへの対応などで、日本人とは全く異なるコストがかかるのです。京都のある寺では、本堂に土足で入ってしまう外国人が多く、新たな係員の配備や看板の設置などが必要になっていると聞きます。寺が大きければ複数の場所で同じような対応が必要になります」 つまり、外国人観光客にかかるコストは日本人より大きくなるため、同じ料金だと採算が取れない状態が続く。二重価格を導入することによって、コストのバランスが取れていなかった価格を是正することにつながるのだという。
一方、前述のバーナードさんのような、在留外国人と外国人観光客の区別の問題もある。 中井氏は同じ二重価格でも、「個人経営の多い飲食業と文化的保存などが意義として入る観光地は別に考えるべきだ」とした上で、こう指摘する。 「観光客と在日・在留人の区別化が一つのポイントです。運営上、二重価格でそのような問題は避けられないと思いますが、一つの施策として、政府や公式アプリなどで差別化するのも必要な手立てだと思います。地元住民らにレジデンスアプリという、自治体や政府が作るアプリをスマートフォンなどに入れて、レジデンス割(地元民割引)という形で価格からある程度の値引きをする。二重に価格を設定するのではなく、地元の人しか受けられない割引という形で差別化を図るのです」 アプリについてはすでにシンガポールなどで進めているという。国内でも別の割引き方法を採り入れている店はあるようだ。 歴史的な観光客数でにぎわいを見せる一方、観光地がコストで悲鳴を上げる状態になるのは避けなければならない。 (AERA dot.編集部・小山歩)
小山歩