姫路城に続け? 外国人観光客への二重価格が世界標準なわけ 「土足で本堂」に対応するコストは
「二重価格は当たり前。ドイツのノイシュバンシュタイン城でも地元の人は600~700円とかだけど、外国人は3000円くらいする。日本でも、払えないような高い値段を設定されたらちょっと困るけど、それでも価格を理由に日本に来なくなるというのはないよ」と話した。 また、旅行会社員のカナダ人男性(45)は、 「日本は、言語表記や水は無料。チップの文化もない。サービスがすごくいい上に価格が安い。よくそれで回っているなと思っていた」 との印象を語った。外国人にとっては二重価格ではないことの方が驚きのようだった。 一方、浅草の観光連盟に聞くと、二重価格については考えていないという。 「コロナ前より多くの外国の人が訪れています。観光客が多くて、それまで地元の人たちが多く入っていた店にも押し寄せています。その結果、地元民が入りづらくなっているという現状はありますが、それでも、来てもらっている以上はやっぱり満足して帰ってもらいたいという思いの方が強い。確かに価格の高騰などでの値上げはあるかもしれませんが、わざわざ来てもらっている人たちだけ値上げをする、ということは考えられません」(担当者) ■飲食店では二重価格を押し付けられる例も 観光地の飲食店では、すでに二重価格を導入しているところも多い。しかし、訪日外国人観光客と在留外国人の区別がされておらず、在留外国人が不利益を被るケースもある。 「日本に住んでいるのに外国人観光客の価格にされてしまった」 そう話すのは、長野県松本市に住むバーナード・オルブライトさん(仮名・24)。アメリカ出身で、日本の美しい景色に感動し、3年前に松本市に移住した。
今年5月、松本城の城下町にあるカフェに初めて行ったときのこと。日本語のメニューと、外国語表記のメニューで料金が違った。日本語を話せて、日本に住んでいるオルブライトさんは、日本語のメニューで店員に注文をしたが、外国人表記のメニューを提示されたという。 「自分は日本に住んでいる」と日本語で伝えたが、店員の反応はなぜか「NO(ノー)!」。何を日本で言っても 「NO」が続き、最後はパスポートや住民票といった証明できるものはないのか聞かれたという。もちろん携帯しているわけではないので、あきらめてしぶしぶ外国人表記のメニューで頼んだ。抹茶と和菓子のセットで、日本人メニューでは600円+税だったが、外国人メニューでは990円+税だった。 外国人だけの価格を設定している理由について店舗に取材したところ、「店の方針なので、理由を話すことはありません」との回答だった。 ■専門家「設定した価格でのコスト回収が難しくなってきている」 二重価格の動きについて、文教大学国際学部国際観光学科の専任講師を務める中井治郎氏は、「二重価格はすでに世界で行われており、全く珍しいものではありません」と指摘する。 カンボジアのアンコールワットやインドのタージマハル、エジプトのピラミッドなど世界的な観光地では、すでに二重価格が設定されているといい、 「日本は、アメリカの人気旅行誌『コンデナスト・トラベラー』が選ぶ『世界で最も魅力的な国』ランキングで1位になるなど世界的な観光地です。にもかかわらず、地元住民と同じ価格だったこと自体、地域に対してある種の負担を強いてきたと考えることもできます。世界遺産である姫路城が値上げをするのは、オーバーツーリズムというよりは、文化財を守る、という意味合いが強いのかと考えます」