倉敷商「春」が来たー!! チーム一丸、闘志燃やす(その1) /岡山
<センバツ2020> 兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で3月19日に開幕する第92回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催、朝日新聞社後援、阪神甲子園球場特別協力)の選考委員会が24日、大阪市北区の毎日新聞大阪本社オーバルホールであり、2019年秋の中国大会で初優勝を果たした倉敷商の出場が決まった。夏の甲子園ではベスト8入りが2度あるが、春は未勝利。8年ぶり4度目のセンバツで念願の初勝利を狙う。組み合わせ抽選会は3月13日に行われる。【松室花実、戸田紗友莉、益川量平、安達一正】 ◇初勝利へ 4度目の挑戦 午後3時33分ごろ、校長室の電話が鳴った。センバツ出場内定を知らせる選考委からの連絡で、受話器を取った川井敏之校長は「ありがたくお受けいたします」と応じた。川井校長は近藤隆志副校長、富田耕成教頭と握手を交わした後、詰め掛けた報道陣に一礼。吉報を届けるため、グラウンドに向かった。 授業を終えてグラウンドに駆けつけた選手たちは、その時を今か今かと待っていた。到着した川井校長が「おごることなく精神肉体をさらに鍛えて全国で活躍してほしい」と出場決定を伝えると、選手は笑顔で深々と一礼。原田将多主将(2年)は「甲子園で全力でプレーできることに喜びを感じる。苦しい練習を怠らず、周囲の方々に感謝の気持ちを忘れずベスト4を目指したい」とあいさつした。その後の写真撮影では、選手たちは練習での真剣な顔とうって変わって満面の笑み。原田主将を胴上げするなど喜びを爆発させた。 直球とスライダーが武器の1年生左腕の永野司投手は「秋の中国大会や神宮大会では本塁打を打たれて悔しい思いをした。センバツまでに体重を増やして重い球を投げ、0を並べてチームを引っ張りたい」。中軸を打つ福島大輝選手(2年)は「足を絡めた攻めの野球をして勝ちにいきたい。初戦は大きな関門。『自分たちの分まで暴れてこい』と声を掛けてくれた先輩たちの気持ちも背負っていく」と力を込めた。 グラウンドには保護者やOBも駆けつけた。福家悠太選手(同)の父・大祐さん(42)は「(高校球児だった)自分や長男が成し得なかった甲子園の夢をかなえてくれてうれしい。仲間を信じて全員野球で頑張ってほしい」と目を細めた。福島選手の母・千恵子さん(41)は「小学1年の時からずっと言っていた夢をかなえた息子に『おめでとう』と伝えたい。自分や夫、親戚も倉敷商の出身なので一族の思いも背負って、得意の足を生かして走り回って」と息子にエールを送った。 19年夏の岡山大会決勝で岡山学芸館に敗れて野球部を引退した3年生の5人も駆けつけ、「甲子園に行けなかった自分たちの分まで頑張ってほしい」と後輩に願いを託した。 昨夏4番に座り、現在も練習に顔を出して後輩の相談相手になっている谷勇波(ゆうひ)さん(3年)は「うらやましいが、甲子園では本塁打が見たい」と頰を緩めた。前主将の岡田健吾さん(同)は「よく頑張ってくれた。笑顔で楽しんで」と健闘を祈った。 ◇保護者らに号外配布 倉敷商のグラウンドでは、「倉敷商に春切符」と大きく書かれた毎日新聞の号外約200部が配られた。吉報を心待ちにしていた部員の保護者らが手に取って広げ、「こんなに大きく写真が載っている」などと笑顔を見せた。 倉敷東小5年の大山総司さん(11)は「兄が部員なので、発表の瞬間を見に来た」といい、「兄はうれしそう。早く甲子園に応援に行きたい」と開幕を待ち望む。軟式野球をしており、兄と同じ捕手といい、「ぼくも甲子園を目指したい」。【小林一彦】 ◇OBに故・星野監督ら 1912(明治45)年、倉敷町立倉敷商業学校として創立した県立高。47年に倉敷女子商業学校と合併し、翌年、倉敷商業高校となった。商業科、国際経済科、情報処理科の3学科があり、校訓は「至誠剛健」。地域のビジネスリーダー育成を目指し、生徒の自己実現とともに、周囲との共生を図る教育に取り組む。 野球部は31年の創部。夏の甲子園は10回出場し、89年、2012年に8強。プロ野球・中日で活躍し、中日、阪神、楽天で監督を務めた故・星野仙一さん(65年卒)、元ヤクルトの松岡弘さん(66年卒)らを輩出した。 生徒数956人。岡山県倉敷市白楽町545(086・422・5577)。