蒔田彩珠インタビュー 幸せな日常のまま最後を迎えたいという気持ちをなるべく明るく意識して演じた『ハピネス』
『下妻物語』(2004)でも知られる嶽本野ばらの同名小説を映画化した『ハピネス』。物語の主人公は、余命わずかな【由茉】とその願いをすべて叶えたいと思った【雪夫】という若いカップル。ずっと憧れていたロリータ・ファッションに身を包む【由茉】を愛おしく見つめる【雪夫】は、彼女から「好き」を存分に楽しむことを学んでいくのだ。監督を務めた篠原哲雄の依頼により度々、篠原作品に主演してきた山崎まさよしが【由茉】の父親役、吉田羊が母親役を務める本作。今回は窪塚愛流さんとW主演を務める【由茉】役の蒔田彩珠さんにお話を伺います。 ――今回ご出演された『ハピネス』は今まで出演されたことのないジャンルですが、出演を決めた理由を教えて下さい。 脚本を読んで“出たい”と思いました。今までまったく演じたことがない役柄だったので、挑戦という意味でも“やりたい”と思いました。 ――どんな準備をされたのですか。 やっぱり余命ものというのが‥‥、どうしても自分が7日後に死んでしまうという状況がなかなか想像出来なかったんです。そこで『ハピネス』のように余命を宣告された人の人生を描く映画を観たり、ひたすら脚本を読んだりしていました。 ――それはどんな映画を観たりしていたのですか。 一つ上げるとしたら『余命10年』(2022)を観ました。小松菜奈さんが大好きなんです。『余命10年』で小松菜奈さんが初めてお母さんに弱音を吐くシーンが凄く印象に残っていて、『ハピネス』でも同じようなシーンがあるのですが、“こんな感じかな”と参考にしながら観ていました。 ――確かに『余命10年』も恋愛することによって2人が輝いていきますね。この映画を観て、蒔田さんの演技の凄さに本当に感動しました。心臓疾患を抱えているからこそ、突然具合が悪くなって倒れたりもしますよね。その後の立て直し方に感心というか感動してしまって。 あのシーンは凄く難しかったです。今回のような役をこれまで演じたことがなかったので、どのくらい発作が出るのか?とか、発作の後はどうなるのか?など篠原(哲雄)監督と相談しつつ調整しながら演じていました。 ――篠原監督は、“悲恋モノにはならないようにしているのではないか?”と思いながら映画を観ていました。そこがとても好きでした。その為には、蒔田さん演じる【由茉】のキャラクターがしっかりと立っていないといけないと思うし、そうでなければ観客にも2人の幸せがしっかりと伝わらないと思うんです。【由茉】を演じるにあたって軸にしていたものはありますか。 【由茉】は本当に強い子なんです。一番辛いのは【由茉】なんですが、恋人や家族のことを自分よりも優先的に考えていて、なるべく自分は明るく振る舞って、今までと変わらない幸せな日常のまま最後を迎えたいという気持ちがあります。そこはブレないように“なるべく明るく”を意識して演じていました。 ――一番チャレンジだと思ったところはどこですか。 やっぱりW主演という部分です。相手役が(窪塚)愛流君だというはことは聞いていたので、“愛流君に任せよう”というよりは“一緒に頑張りたい”と思いました。 ――色々な現場を体験されて、映画の作り方で「ここは面白い」や「ここはもっと掘り下げていきたい」と思ったことがあれば教えて下さい。 年齢が上がっていくにつれて「ちゃんと自分が作品に参加している」という意識が強くなってきました。今までは誰かの妹だったり、娘だったりという役が多かったので「皆さんについて行く」という気持ちが強かったんです。でも今回はW主演なので「2人で一緒に先頭に立って行こう」という気持ちが生まれました。その部分に意識の変化があったと思います。