電力爆食の米国データセンター、今後3年で需要3倍
米エネルギー省(DoE)が所管するローレンス・バークレー国立研究所(LBNL)の報告書によると、米国のデータセンターの電力需要は、今後3年間でほぼ3倍に増加し、同国電力の最大12%を消費する可能性がある。データセンター業界が人工知能(AI)サーバーの導入を急速に拡大していることがその要因だ。 ■ 28年までに米国総電力消費量の6.7~12%に 報告書によると、2028年までに米国のデータセンターの年間電力消費量は74~132GW(ギガワット)に達する見通しだ。これは米国総電力消費量の6.7~12%に相当する。予測値に幅があるのは、電力消費量が、AIチップの一種であるGPU(画像処理半導体)の需給によって左右されるからだ。これに対し、現在、データセンターは米国総電力消費量の約4%強を占めている。 データセンターに加えて、米国製造業の国内回帰(オンショアリング)や、自動車・ビルの電化による電力需要の増大も発生している。米国の総電力需要は2024年に過去最大に達しており、2025年も記録を更新すると予想される。 エネルギー省の産業効率・脱炭素化局(IEDO)の局長であるアヴィ・シュルツ氏は「米国におけるエネルギー需要の増大という点で、重要な課題を我々に示している」と述べた。 ■ GPUアクセラレーテッドサーバーの導入で電力2倍超 AIは、データセンター市場の成長の原動力とみられている。しかし、英ロイター通信は、「AIはますます高性能なチップと強力な冷却システムを必要としている」と報じている。 2016年に前回の報告書が公表された時点で、データセンターにおけるAIサーバーの電力消費量はサーバー全体の約2%だった。しかし、2017年以降はGPUアクセラレーテッドサーバーが導入されるようになり、この分野の電力消費は6年間で2倍以上に増えた。
■ シュルツ氏「報告書をエネルギー戦略に生かすべき」 IEDOのシュルツ氏は、今回の報告書をエネルギー戦略に生かすべきだと指摘している。 同氏は、「報告書が強調しているのは、実際に最も急速に成長しているもの、つまり米国における電力需要の最前線にあるのが、AIデータセンターという新しい需要であることだ」と述べた。 その上で同氏は「電力網の柔軟性と回復力の向上を図るエネルギー省の取り組みに役立つ可能性がある」とし、報告書の意義を強調している。データセンター拠点における、(1)長期間稼働可能な蓄電施設の建設、(2)次世代原子力発電の小型モジュール炉(Small Modular Reactor、SMR)、(3)先進的な地熱発電、といった新技術の商用化に活用が期待できるという。 バークレー国立研のエネルギー・環境政策部門研究員であるアーマン・シェハビ氏と同氏のチームはデータセンターの動向をより綿密に追跡するために、リポートを毎年または半年ごとにまとめることを提唱している。 シェハビ氏は「エネルギー使用量がどのくらいか、そしてより重要なことに、エネルギー使用量増加の原因が何かを示すことで、どこを効率化すべきかを考えることができる」と指摘する。 今回の報告書では、米国内で急成長する AIデータセンターのエネルギー効率戦略をこれまで以上に研究し、解決策を見いだすことの重要性を提言している。 ■ 「トランプ次期米政権下でも再エネへの移行続く」 一方、ロイター通信は別の記事で、米国の再生可能エネルギーへの大きな移行は、トランプ次期米政権下でも続く、とする三菱UFJフィナンシャル・グループ米州トップの見解を伝えている。 米州MUFG ホールディングスのCEO(最高経営責任者)であるケビン・クローニン氏はロイター通信とのインタビューで、「トランプ次期大統領の反再生可能エネルギー的な発言が戦略の変更を促すことはない」と述べた。「新政権は化石燃料に対してより積極的な姿勢を取るだろうが、それが再生可能エネルギーの消滅を意味するわけではない」(同) 同氏は、「データセンターのキャパシティーは2030年までに倍増すると見込まれており、信頼性の高い電力の確保が戦略上ますます重要になってくる」とも付け加えた。
小久保 重信