「同僚のにおいで仕事に集中できない」 人事評価反映も、企業で進むスメハラ対策
セミナーでの講師経験がある広報部の酒井美絵子さんによると、対面で仕事をする機会が増えたことに伴い他人のにおいが気になる人が続出。マンダムが昨年に20~50代の男女800人を対象に実施した調査では「直接対面で気になったこと」について、34・4%が「におい」と回答。「特にない」を除くと1位の回答となり、2位の「肌の状態」(26・4%)に大きく差をつけた。また、男性のデオドラント(体臭抑制)ユーザーの4割以上が、コロナ禍が収束した昨年5月以降の利用者であることも判明した。
酒井さんは「汗によるにおいは対策を講じれば抑えられることもあり、関心が高まっている」と分析する。一方で自身のにおいには無自覚な場合が多いと指摘。「においについて正確な知識を持ち、職場でのよりよいコミュニケーションに役立てることが重要だ」と強調した。
■尊厳傷つける可能性も
厚生労働省はパワハラやセクハラだけでなく、妊娠や出産、育児や介護休業など、多岐にわたるハラスメントについてガイドライン(指針)を設けている。一方、スメハラには明確な基準はなく、喫緊の課題と捉えられていないケースも。指摘次第では「パワハラを受けた」と主張されるケースもあり、悪意のないにおいへの対応はリスクになる懸念もある。
企業のスメハラ対策では、全社員にスメハラの存在を周知して注意を促すほか、個人に対し、直接指導する場合がほとんどだ。ただ、本人が気を遣ってケアをしているにも関わらず、においが改善されていないことを自覚していないケースも。対応次第では当事者の尊厳が傷つけられる可能性も考えられる。
人事労務に詳しい帯刀康一弁護士(東京弁護士会)は「指摘することで本人の人格権と衝突し、パワハラだと主張されてしまうリスクもある」と強調。また本人に注意する役割を負わされた労働者が上司からパワハラを受けたと主張する事態も想定され、帯刀氏は「会社としては八方ふさがり。スメハラへの対応は企業として一番悩ましいところだ」とする。