ラグビー「リーグワン」初代王者に埼玉… “笑わない男”稲垣啓太らメンバーが乗り越えた“もうひとつの戦い”
今年1月に開幕した新リーグ「ジャパンラグビーリーグワン」のプレーオフ決勝が29日、東京の国立競技場に3万3604人を集めておこなわれ、埼玉パナソニックワイルドナイツ(ワイルドナイツ)が18―12で東京サントリーサンゴリアス(サンゴリアス)を下し初代王者に輝いた。新型コロナウイルスの影響を受けてか観客動員も伸び悩んだ試行錯誤のファーストシーズン。前身のトップリーグの昨季王者であるワイルドナイツは、いかにして苦難を乗り越えたのか。
守り切った最終局面
わずか6点リードで最終局面を迎えた。ワイルドナイツがボールを持ち、時間を稼いで終焉を迎えようとした。そこでサンゴリアスが攻守逆転した。 試合終了まで1分弱。トライとコンバージョンゴールで逆転できる状況で、約45メートル先のゴールラインを見据えたのである。 ワイルドナイツは防御網をこしらえ、衝突が起きれば球に絡んだ。 最後は自陣10メートルエリア左でスタンドオフの山沢拓也が刺さる。いったん、手離して、ジャッカル。この日、トライも決めていたウイングのマリカ・コロインベテとフッカーの堀江翔太が、その場にへばりついた。 サンゴリアスはノット・リリース・ザ・ボールの反則を取られた。サンゴリアスの面々が色めき立つ紙一重の判定ののち、場内のホーンが試合の終わりを告げた。ノーサイド。 キックと幻想的なプレーで知られる山沢が劇的な幕引きをこう振り返った。 「自分の得意なプレーではないですけど、それでチームに貢献できたのはよかったです」 ワイルドナイツが守り切ったのは最終局面だけではない。もうひとつのハイライトは、蹴り合うシーンが多かった前半の締めくくりだ。 3ー10と7点差を追うサンゴリアスが、自陣中盤右のスクラムからボールをつなぐ。ロックのツイ ヘンドリックの突進、インサイドセンターの中村亮土主将のフラットなパスで、攻防の境界線に亀裂を入れた。最後はフルバックのダミアン・マッケンジーがインゴールへ抜け出した。