「人を2分間楽しませるのは大変なこと」江戸の奇術「手妻」とVRの共通点
手妻師としての経験
手妻師としての経験は、非常に強く生きています。 舞台では、太夫(手妻をメインで演じる人)のアシスタントを務める際、太夫が次にどう持っていこうと考えているのかを読むことが求められるとともに、それを観ている若い人や年配者、マニア、素人など幅広い層のお客様をどう楽しくさせるかも考えねばなりません。空中から俯瞰して、そこにいる人々を眺めるような視点が必要になるのです。 この見方が、VRの世界で役立っています。体験者を楽しませなければなりませんが、体験を待っている人たちにも「退屈だ」、「暑い」、「疲れた」と感じさせず、いかに楽しませるかをも考えるわけです。さらに、並ぼうかどうか迷っている人も楽しませて並ばせたいし、関心がない人の目も引きたい、と考えると、お客様の層はどこまでも広がっていくわけです。この考え方は、完全に芸能の考え方です。目の前のお客様は、多様なお客様のごくごく一部であり、この方々だけを相手にしていては、限られた成果しか得られません。 今後も、VRでイノベーティブなことをやっていこうと思います。これまでに人類が遭遇したことのない超面白いことを自分の手で作り出していける、ということに非常に大きな喜びを感じつつ、日々取り組んでいます。 (取材・文:具志堅浩二)