日本シリーズ「フジテレビの取材パス没収」は妥当だったのか?“ワールドシリーズ放映問題”とは分けて考えるべき…NPBに問う“報道の自由”とは
スポンサーへの過剰な反応ではなかったか?
実は今回のフジテレビ問題で指摘されているのが、NPBのスポンサーへの過剰な反応ではなかったかということだ。日本シリーズのスポンサーは金融系グループのSMBC。一方、ワールドシリーズの目玉はもちろん大谷だが、その大谷のスポンサーに同じ金融系の三菱UFJ銀行がついている。またそれぞれには博報堂と電通という大手広告代理店がいる。関係者の話からは、このスポンサーへの配慮から取材証剥奪という過剰な反応が生まれたのではないか、という指摘があることも記しておきたい。 自局も中継する日本シリーズの裏にワールドシリーズのダイジェストをぶつけたフジテレビの配慮のなさ、視聴率至上主義に批判の声が出るのは当たり前で、NPBが何らかの対応をすることをとやかくいうつもりはない。ただ、中継権の問題に対する処分なのだから、来年以降の日本シリーズの中継の権利を停止する(そういう意味では第3戦の中継権の停止ができるなら、それはありだったと思う)などが妥当であり、報道の自由を侵すような処分は行き過ぎと言わざるを得ない。
報道の自由を侵害する危険性
取材証剥奪という処分は報道の自由を侵害する恐れがある。NPBが恣意的に取材証を取り上げるようになれば、その前例から報道する側の自主規制を暗に強要する圧力にもなりかねない。そしてフジテレビが起こした今回の事案だけでは済まされない危険性もあるということだ。 “プロ野球の憲法”と言われる野球協約の第3条では、その目的として「わが国の野球を不朽の国技として社会の文化的公共財とするよう努め、野球の権威及び技術に対する信頼を確保する」ことを掲げている。何度も書くがプロ野球は社会の文化的公共財である。そういう役割を認識した上で12球団とそれを統括するNPBは、球界の発展とプロ野球の振興、野球という競技そのものの普及に努めるべきであり、そうした社会的な役割が不正なく行われているかを監視するのもまたメディアの役割である。 グラウンドでの素晴らしいプレー、選手たちの日々の努力、洞察深い勝負の深淵……そういうスポーツとしてのプロ野球を伝えることも取材者の務めであるが、同時にそういう監視役もまた大きな役割なのである。 そうした取材する場所を保証するために取材証はあるはずである。
(「プロ野球亭日乗」鷲田康 = 文)
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