【音羽山親方・春場所総括】新入幕優勝の尊富士は「自分が“勝負師”であることを意識している」 新大関・琴ノ若は「合格点」
現役時代は、右四つからの下手投げなどを得意とするなど、「玄人好み」の相撲で活躍した71代横綱・鶴竜。昨年12月に年寄・音羽山を襲名し、東京都墨田区に新たに音羽山部屋を創設した。相撲部屋の師匠として、5人の弟子と共に新しいスタートを切っている音羽山親方に、春場所の土俵を振り返ってもらった。 【写真】初土俵から10場所目での優勝は史上最速! 24歳・尊富士の堂々とした姿
「自分の相撲」をつかんだ尊富士
――毎年「荒れる春場所」と称される大相撲春場所は、新入幕で幕尻の尊富士関がまさかの優勝。入門から10場所目、そして110年ぶりという快挙に、日本中が盛り上がりました! 音羽山:いやぁ、本当にビックリしましたねぇ。「110年ぶり」と言われても、なかなかピンと来ませんけれど、それほどまで誰もが成し遂げられなかった偉業。しかも、尊富士は14日目の(元大関)朝乃山戦で負けて、千秋楽の出場さえ微妙でした。もし、千秋楽で休場して不戦敗になっても、優勝が決まったら「表彰式はどうなってしまうんだろう?」などと、われわれ親方衆もハラハラした展開でした。 ――尊富士関が優勝したポイントはどこにあったでしょうか? 音羽山:まず、最初のヤマ場は10日目の大の里戦。ここまで1差(1敗)で尊富士を追いかけていた大の里は、ちょっと相撲が雑でしたね。簡単に勝てる方法として、引き技を見せましたが、そのちょっとした隙を尊富士は見逃さなかった。そこから、一気に持っていって勝負を付けたところがよかったですね。 そして、翌日の大関・琴ノ若戦。尊富士にとって、初めての大関戦だったにもかかわらず、圧力をかけて一気に走って、一方的に勝った。この一番は彼にとって自信になったでしょうけれど、新大関としてはショックだったと思います。 翌日(12日目)の豊昇龍戦も、最後に投げられた(小手投げ)とは言え、立ち合いから攻めている。10日目、11日目の勝利で、「俺の相撲はこれなんだ!」というものをつかんだのだと思います。まあ、最後は豊昇龍が「大関の意地」を見せた形でしょうか?