キング・オブ・黒毛和牛「宮崎牛」を本場で堪能!
「日本のひなた」といわれる温暖な気候が特徴の宮崎県は、24年間もの間、国内での食料自給率ナンバーワンを誇る食材の宝庫です。マンゴーに代表されるフルーツなどの農産物もさることながら、畜産業もとても盛ん。なかでも宮崎牛は、和牛オリンピックともいわれる「全国和牛能力共進会」で4連覇中の、キング・オブ・黒毛和牛として不動の地位を築いています。その味わいと生産者の想いを伺うべく、宮崎を訪ねました。
宮崎牛が育つ牛舎で「いただきます」の意味を再認識
とろけるようなおいしさで、世界から注目を集める黒毛和牛。その最高峰であり続けているのが、宮崎県で育てられている宮崎牛だ。県内で飼育された黒毛和牛のうち、宮崎牛を名乗れるのは、指定された種雄牛を父にもつ、肉質等級が4等級以上のエリート牛のみ。この宮崎牛は、5年に一度、全国から選りすぐられた和牛を集めて開催される全国和牛能力共進会で、4大会連続最高賞の「内閣総理大臣賞」を受賞している。 脂肪交雑(いわゆる霜降り)や肉の色沢、肉の締まりとキメ細やかさ、脂肪の色と質という4条件のすべてにおいて最高ランクの宮崎牛を、ぜひ本場で味わいたい! というわけで、やってきました宮崎県。県内だけでなく、日本全国、さらには世界に向けて宮崎牛を提供している有名な肉屋さん「ミヤチク」が営む、焼肉と鉄板焼ステーキレストラン「橘通り ミヤチク アパス」を訪れた。
宮崎市の中心街にあるこのお店では、ランチなら1200円から宮崎牛の焼肉やハンバーグ、ステーキなどの定食が味わえる。せっかくなので、目の前の鉄板で焼かれるステーキが食べられる厳選ロースステーキコース(100g、6000円)をセレクト。サラダバーやスープ、ご飯、デザートまでついたボリューム満点の内容だ。
ワインでフランベされたツヤツヤと美しいロースは、口に入れたとたんとろけてしまった。その過程で肉汁が口いっぱいに広がり、なんともいえない旨みと甘みが鼻から抜けていく。このお店の鉄板焼きステーキコースの特徴は、肉を焼いた食パンの上に載せて提供するところ。食事の終わりには、肉汁が染みたパンを鉄板上でギュッ~と押さえつけながら焼き、クレープほどの厚さになったものにチョコレートやカシスソース、粉砂糖をかけた「パンのデザート」が味わえる。ほんのり肉汁風味のユニークなスイーツは、旨みたっぷりでも意外なほどアッサリだった。 宮崎牛のおいしさにノックアウトされた後、宮崎市内から車で1時間ほどにある日南市の牛舎に向かう。この地で宮崎牛を飼育しているのは、宮崎県畜産共進会で二度もグランドチャンピオンに輝いた蓑毛稔治さんと2人の息子だ。牛舎に足を踏みいれたとたん、800㎏超とそれはそれは立派な黒毛和牛が、柵の間からヌッと頭を出してきた。その後ろでエサを食んでいた牛たちも、「誰か来たかな?」とばかりに首をめぐらせている。 「父は子牛を買ってきて出荷まで育てる『肥育農家』で、私は優秀な雄牛の精子を牛舎の雌牛に授精させ、繁殖させて子牛にまで育てる『繁殖農家』です。繁殖農家は10ヵ月ほど飼育した子牛を競り市に出しますが、肥育農家はそこから約20ヵ月かけて育てます。期間が短いため早く結果(成果)がわかること、長期間、大人の牛を育てるよりも資金がかからないことから、私は繁殖農家の道を選びました」(次男の蓑毛敏雄さん、以下同)