参院議員による前代未聞の巨額詐欺 「オレンジ共済組合事件」 警視庁150年
平成9年1月29日、警視庁、広島県警、北海道警の合同捜査本部は詐欺容疑で参院議員の友部達夫=当時(68)、故人=を逮捕した。友部は定期預金事業「オレンジ共済組合」の実質的主宰者として、約2千人から90億円以上を集めたとされる。「政治とカネ」の問題はいつの時代も繰り返されるが、だまし取った金で国会議員となり、議員バッジを利用して不正を加速させたという前代未聞の巨額詐欺事件だった。 友部は昭和58年に「年金党」を設立し、衆参合わせて4回立候補するも落選し続けた。その間に政治団体としてオレンジ共済組合の運営を開始。平成4年には「1年定期で6・74%、3年定期で7・02%。銀行や郵便局より有利」などとうたう金融商品「オレンジスーパー定期」を販売した。バブル崩壊後の低金利時代につけ込んだ絶妙な高利は人気となり、全国約200カ所に代理店を展開するほどだった。 だが、事業実体は預かり金を運用せずに配当に回す典型的な投資詐欺だった。金の多くは友部の政治活動資金のほか、次男のF1カー購入など、家族らの遊興費に充てられた。預託した人には解約の先延ばしや配当の停滞などが続出していた。 友部は7年7月の参院選で新進党から出馬し、当選。1年半後に逮捕されると、比例名簿順位を上げるため、政界工作に数十億円を費やした疑惑も浮上し、新進党の求心力低下にもつながった。 参院が史上初の辞職勧告決議をしたが友部は辞職を拒否。懲役10年の実刑判決が確定して失職するまで不登院で議員を続投した。(外崎晃彦)