思いがけぬ妊娠、相談先を探して漂流する女性に寄り添う「にんしんSOS」 過酷な状況で絶望、孤立する女性と30回以上やりとり重ねて心解きほぐす
今年もクリスマスが終わり、年末年始を迎えています。世の中が賑わいを増すいっぽう、行政や病院などの公共機関が休みに入り、誰かの助けを必要とする人にとっては取り残されやすい時期です。 その中には「思いがけない妊娠」に悩み、孤立する人もいます。全国に55か所ある「にんしんSOS」では、電話やメール、LINEなどによる相談窓口を開いています。相談は無料、匿名で、秘密は守られ、サポートにつながる情報提供や、支援を得られる窓口や医療機関につなげる手助けをします。
「生後0日死亡を無くしたい」
今回、東京と埼玉、千葉で運営する認定NPO法人ピッコラーレを取材しました。「生まれてすぐに亡くなる、生後0日死亡を無くしたい」という思いで、2015年に助産師7人と社会福祉士が立ち上げたのが「にんしんSOS東京」です。 妊娠にまつわる様々な相談が寄せられ、10代、20代からの相談が7割を占めます。男性からの相談もありますが、全体の8割は当事者の女性から。「妊娠したかも」が7割、妊娠確定後の相談が3割です。一口に「妊娠相談」といっても、内容は多岐にわたりますが、背景にある大きな課題として、二つの側面があります。
「正しい性の知識が乏しいこと」「性のトラブル」
一つ目は「正しい性の知識が乏しいこと」に起因する心配事です。避妊の失敗だけでなく、現実には妊娠している可能性が低いケースでも、深く悩んでしまっている相談が若年層に多く見られるといいます。この背景には、包括的な性教育の不足、避妊の選択肢が少ない、避妊にもそれなりのお金がかかってしまう、まさかの場合に緊急避妊薬へのアクセスが悪いなどの事由があります。 二つ目は「性のトラブル」による思いがけない妊娠です。若年女性を巻き込むトラブルは深刻で、こうした状況が、生後0日死亡につながりかねない「孤立出産」へ女性を追い込む大きな要因です。
性的搾取の多くは大人の男性 彼らは責任を負わない
例えば、虐待や家出などで居場所を持てない女性が、暴行や売春などに遭いやすいケース。交際中であっても妊娠がわかった途端に連絡が取れなくなるケース。ほかにも貧困状態、知的障害などの要因が複数からみあって望まぬ妊娠をしてしまい、それを誰にも相談できないまま孤立に追い込まれてしまいます。 そうした若年女性たちを搾取している多くは大人の男性ですが、彼らが責任を負うことはありません。 ピッコラーレ代表理事の中島かおりさんは、居場所のない女の子を「漂流女子」と名づけました。行くあてがない、住む家がない、保護してくれる大人がそばにいない女性が思いがけず妊娠し、相談先を探しながら孤立している様子はまさに「漂流」だといいます。孤立出産になれば、生まれたばかりの赤ちゃんの死亡につながってしまうこともあり、母体にとっても命に係わる危険が伴います。