瀬戸康史の“沼る魅力”とは? 夢中になる視聴者が続出するワケ。俳優としての唯一無二の強みを徹底解説
三谷幸喜監督最新作、映画『スオミの話をしよう』にて、西島秀俊扮する刑事の部下で、スオミの行方不明事件を捜査する小磯杜夫(こいそもりお)を演じる瀬戸康史。今回は、日本映画界、ドラマ界に欠かすことのできない存在である瀬戸の役者としての魅力を、これまでの出演作を分析しながら、徹底解説する。(文・かんそう) 【写真】瀬戸康史の魅力あふれる珠玉の未公開カットはこちら! 瀬戸康史写真一覧
変幻自在の俳優・瀬戸康史の魅力
「瀬戸康史 ああ瀬戸康史 瀬戸康史」という俳句があるように、瀬戸康史の魅力を言葉にするのは夜空に輝く星を数えるほど困難だ。 それでも瀬戸康史をあえて一言で表すのなら、私は「雲」の漢字を選ぶだろう。瀬戸康史は役によってその姿形をガラリと変える。それが俳優・瀬戸康史の最大の魅力であり、恐ろしさだと私は思っている。 瀬戸康史を見る人間一人ひとりの中にそれぞれ、まったく違う瀬戸康史が存在しているのだ。仮に瀬戸康史ファン100人に「瀬戸康史のイメージは?」とアンケートを実施した場合、綺麗に100通りの答えが返ってくるだろう。それほどまでに「瀬戸康史」という俳優を、人間を我々は掴み切ることが出来ない。
圧倒的な憑依力を持つ、瀬戸康史の特異性
瀬戸康史には、圧倒的な魅力がある。前述した通り、瀬戸康史とは雲。誰にも掴むことが出来ないが、誰の目にも見える。見る人間によって瀬戸康史は自由に形を変える。そういう芝居を瀬戸康史はしているのだ。 例えば、ドラマや映画などの話をしている時に「昨日のドラマでキムタクがさ~」と言った具合に「役名」でなく「役者の名前」で登場人物を呼ぶ人間を見たことがないだろうか。これは良くも悪くも役者自身に強烈なキャラクターがある場合に起こりやすい現象なのだが、瀬戸康史には一切それがない。 いや、なにも瀬戸康史のキャラクターが薄いと言っているのではない。瀬戸康史ほど誰が見ても「瀬戸康史だ」と認識できる俳優もいないだろう。 にもかかわらず、瀬戸康史の演じる人物たちは確実に瀬戸康史ではなく「透明なゆりかごの由比先生」「ルパンの娘の和馬」と役の名前を覚えることができる。そう、瀬戸康史は役者として1番大事な「憑依能力」がズバ抜けている。 それは単純に「見た目」を変えるのではない。瀬戸康史が変化させるのは「中身」そのものだ。