アラスカ州ジュノー、「土曜日クルーズ船禁止令」で住民投票へ、オーバーツーリズムで議論が二極化
米アラスカ州の州都であり観光都市ジュノーが、クルーズ船の受け入れで揺れている。気候変動で縮小しつつある「メンデンホール氷河」などを目的に毎年多くのクルーズが寄港。観光による経済効果か、多すぎる観光客を管理すべきか、議論が分かれている。 そのなかで、毎週土曜日にクルーズ船の寄港を禁止する新たな取り組みが議会で認められた。今後、その取り組みを実施するには、議会が8月15日までに法案を策定し、制度化する必要がある。しかし、その可能性は低いと見られている。 そのため、2024年10月1日に実施される市議会員選挙の投票で、議員の選出とともに、その「土曜日クルーズ船禁止令」への賛否が住民投票にかけられることになりそうだ。 人口3万2000人のジュノーでは、交通量の増加、渋滞、メンデンホール氷河やその他の氷河に観光客を運ぶ観光ヘリコプターの騒音などが住民を悩ませてきた。 ジュノーに何十年も住んでいるデボラ・クレイグさんは、早朝の霧笛や乗客向けの放送アナウンスにも眉をひそめ、「大量の観光客が訪れることで、私たちがジュノーを愛する理由がどんどん薄れていく」と嘆く。 一方で、「観光客を歓迎しないという意味ではない。問題は量。とにかく多すぎる。短期間にあまりに多くの観光客がやってきて、小さなコミュニティを圧倒してしまうことが問題」と指摘する。 この取り組みに反対する人たちもいる。寄港制限は地元経済に大きな打撃を与えかねないからだ。ジュノーのダウンタウンにあるギフトショップ「カリブークロッシング」の年間収入の98%が夏季シーズン。オーナーであるローラ・マクドネルさんは、「クルーズ乗客に依存している地元企業と、地域社会にとって観光は大切」と話し、「コミュニティの、地元経済の危機を真剣に考える必要がある」と続けた。 マッキンリー・リサーチ・グループによると、2023年のジュノーのクルーズ船による恩恵は3億7500万ドル(約600億円)。そのほとんどが乗客による消費だった。パンデミック後、ジュノーに寄港するクルーズの乗客数は急増しており、2023年には過去最多の160万人以上となった。