いまの運用成績は円安の影響も大…楽天証券の”中の人”に聞く「NISA・オルカン一択で大丈夫?」
運用絶好調で「弱点」が見過ごされている?
しかし、メディアやSNSでのあまりの高評価によって、インデックスファンドとしての〝弱点〟が見過ごされている側面があるという。楽天証券資産づくり研究所副所長兼ファンドアナリストの篠田尚子氏が次のように解説する。 「長期の積立投資をする際、最適な投資信託のひとつであることは間違いないでしょう。しかし、万能ではありません。今後、運用が期待通りに行かない場面を乗り越えるためにも、中身をきちんと理解することが重要です」 ◆足下の運用成績は円安による「追い風参考記録」 そこで、まず理解するべきは「本当の実力」だという。前述したように、【オルカン】と【S&P500】のここ数年のパフォーマンスは圧倒的だが、篠田氏は「〝追い風参考記録〟と受け取っておきましょう」と指摘する。 「【オールカントリー】や【S&P500】、さらにはNYダウなど、主要な海外株式指数はここ3年間ほどで軒並み70~80%のリターンを出してますが、実はその内の50~60ポイントは円安効果によるものです。約3年前の’21年1月は1ドル=103~104円台で、現在は148~150円前後。 つまり、3年間で4割以上も円安になり、米ドル建てのインデックスファンドのリターンを実力以上に底上げしたのです」(篠田氏/以下同) 意外なことに、直近3年間をみると、現地通貨ベースなら日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)連動のインデックスファンドの方がリターンは高かったという。 「為替の変動もリターンの源泉であり、外貨建て投資の醍醐味であることは否定しません。ですが、昨今の急速な円安によって過大評価されていることには注意が必要です」 今後、為替相場が落ち着き、〝追い風〟が止んでしまうと、これまでのようなパフォーマンスは期待しにくい。また、海外株式市場が下落する局面で円高・ドル安が進行すれば、損失も増幅されることになる。 ◆米国のハイテク大型株の時価総額増加で「分散効果は低下」へ 次の懸念材料は「分散効果の低下」だ。冒頭に述べたように、現状、【S&P500】よりも【オルカン】の方が人気は高い。それは、【S&P500】が米国株だけを投資対象としているのに対して、【オルカン】は新興国を含む世界の株式市場を対象とした、「分散投資」をしている点が支持されているからだ。教科書的にいうと、投資先の金融商品や地域を分散させる分散投資は、運用のリスクを抑えることができる。しかし、【オルカン】には投資対象の偏りが目立ってきているという。 「おもな投資対象国の構成比をみると、米国63%、日本6%、英国4%、フランス3%程度と、米国に大きく偏っています。その原因は、米国市場で一部の大型株の時価総額が突出して増大したためです。 例えば、アップル、マイクロソフト、アマゾン、アルファベットの4銘柄だけで、【オルカン】全体に占める時価総額の比率は10%を超えてます。分散投資の効果が弱まっている状態といえます」