【ふくしま創生 挑戦者の流儀】古川プラスチック(福島県会津若松市)社長・古川孝治(下) 自社製プラモデル反響
福島県会津若松市河東町の古川プラスチックは9月中旬、初の自社ブランド商品「べこぷら」を発売した。会津地方の郷土玩具「赤べこ」の形をしたプラモデルだ。磐梯町の道の駅ばんだいで先行販売して以降、3カ月で2500個ほどが売れた。パトカー仕様に色が塗られたユニークなべこぷら作品が交流サイト(SNS)に上がる。社長の古川孝治(60)はスマートフォンを手に「反響は予想以上。正直、バズってる」と戸惑う。 自社で金型をデザインし、製造から販売までを一貫して担う。プラモデルは二対の胴体パーツを取り外すと簡単に組み立てられる仕組みだ。無地にしてあるので、顔や胴体の模様は油性ペンやスプレーで自由に絵付けができる。赤べこならではの首振りはなく、簡素な仕上がりにしたのは「制作者の豊かな発想に委ねたい」という古川の思いからだという。 商品化に至る根底には、玩具部品の受注に始まった社業の成り立ちがある。父と共に幼い頃からものづくりに親しんできた。その楽しみ、苦しさを味わってきたからこそ、修学旅行の子どもらにも手頃な値段で、ものづくりや、郷土の玩具と気軽に触れてほしいと願う。最初の納品先に選んだ道の駅ばんだいは会津若松市への玄関口に当たる。「べこぷらを目当てに、会津若松まで観光に足を運んでくれたらうれしい」と期待する。販路も市内外の道の駅や漆器店、旅館、福島空港にまで広がった。
古川は必ず売り場へと足を運んでいる。納品の際には自社で手がけたポップやサンプルを提供する。ただ、より多く売れればいいとは全く考えてない。転売を危惧し、ECサイトでの取り扱いに慎重な姿勢を示す。地元に貢献できる商品づくりが自社ブランドのコンセプトで「商品が一人歩きするような状況にはさせない」と固く誓う。一歩ずつ、ゆっくりと、会津発のものづくりを全国へと広げていくつもりだ。(文中敬称略)