県内、クマ目撃大幅減 昨年比ブナ「並作」、捕獲増要因か
県内でクマの目撃件数が昨年の半数以下で推移している。今年は餌となるブナの結実が昨年の「大凶作」から一転、「並作」となり、餌を求め市街地に出没するケースが大幅に減ったほか、捕獲により里山での生息密度が下がったことも要因とみられる。一方、クマによる人身被害は例年、冬眠前の9~11月に集中しているため、県は本格的な降雪を前に果樹や畑の手入れの徹底を求めている。 ◇ 県みどり自然課によると、今年の目撃件数は11月17日現在で318件。月別最多は7月の95件で、9月に10件、10月は5件にとどまる。昨年1年間は765件で、過去10年間で2番目に多かった。東北森林管理局が発表した今年のブナ結実状況は、本県は22年以来の「並作」で、昨年の「大凶作」から改善した。 一方、県内で2023年度の捕獲頭数は800頭で過去最多だった。それまで最多の06年度の692頭を大きく上回ったが、同課の担当者は「里山で農作物被害が目立ち、わなをかけることが多く、結果的に800頭となった」と話す。
クマの生態に詳しい東北芸術工科大(山形市)の田口洋美名誉教授は「イノシシやシカの生息域拡大に伴い、クマはブナやナラの実を食べるため、山の奥から里山に下がった。里山周辺の食資源に依存してきたが、昨年度の捕獲増で里山の生息密度が下がったことが目撃減の要因ではないか」と分析。一方で「5、10年後に再び個体数が増える恐れがある」とし、人身被害の危険性を考慮して転作など里山に出没しにくい環境整備が重要と指摘した。 今年の市街地での目撃は11月17日現在で78件で、昨年1年間の183件を大きく下回るペースだ。今年4月には山形市の馬見ケ崎川河川敷付近で目撃されているが、同課担当者は「春先は昨秋の大凶作の影響が大きいと思う」と話す。 今年の人身被害3件のうち、山中ではいずれも6月に2件発生し、西川町でタケノコ採りの男性、山形市では登山中の男性が襲われた。山際は米沢市で7月、出合い頭に遭遇した1件で、市街地では発生していないが、冬眠に向け、餌を求めて行動が活発化する恐れがあり、市街地での出没も懸念される。昨年までの過去約50年間で、クマによる人身被害の6割は冬眠前の9~11月に起きた。
県は▽果樹の実を残さない▽収穫の際に野菜くずを出さない―など餌場をつくらないことを対策のポイントに挙げている。