開けると目が合う?宮城で産地直送の「こけしの缶詰」発売
「こけし缶」を開けると、上目遣いのこけしと目が合う
「こけし」発祥の地である東北・宮城県で、ついにこけしが缶詰になった。缶を開けると、上目遣いの「こけし」と目が合う。この「こけし缶」を開発した宮城県の老舗こけし店は、「商品を通じて、東北以外の人に『東北らしさ』や伝統をおもしろく伝えることができたら」と期待している。
「こけし缶」を開発したのは、仙台市青葉区の老舗こけし店「こけしのしまぬき」。東北の伝統工芸品を新しい形で商品化する試みをしている同店が、仙台市の伝統和菓子「仙台駄菓子」とコラボできないかと考え始めたのが商品開発のきっかけだったという。 始めは仙台駄菓子のパッケージに「こけし」を描くことを思いついたが、「それだけではおもしろくないと思った」と同店の島貫昭彦社長(58)。以前、伝統こけしの職人が上を向いてもの思いにふけっているこけしを作っていたことをふと思い出し、「缶に入れて、開けたときにこけしと目が合ったらおもしろいのではないかと思った」。
島貫社長は、鳴子系(宮城県大崎市)と弥治郎系(同白石市)の伝統こけしを作る3人の職人に、「缶に入るこけし」の制作を依頼。商品開発から約半年となる今月、仙台駄菓子が入った「仙台駄菓子缶」と、こけしが入った3種類の「こけし缶」の計4種類の缶詰が発売となった。 缶に入っているこけしは、缶詰に入れるためだけに作った特注品だ。こけしをつぶして圧縮したような形と上目遣いの表情が、愛着のわく可愛らしい姿に仕上がっている。缶の中には、職人がこけしを作った際に出た木くずが入っており、島貫社長は「職人と手にした人との距離感を縮めたかった。『産地直送』の感じを味わってほしい」とそのねらいを話す。
「こけし缶」の鳴子系こけしの制作を担当した、職人歴40年の大沼秀顕さん(59)は、制作を依頼された際「缶に入るものだなんて、そんな簡単にできないと思った」と笑う。作り始めてからは、缶からのぞく上目遣いの表情を作るため、通常のこけしより顔の位置を上にずらしたり、缶に入るサイズにするために胴体を圧縮したようなどっしりとした姿に変えるなど、工夫を重ねた。「いつもと違うのを作るのは楽しかった。『こういうのもできるんだ』とアイデアの新しさを見て、楽しんでほしい」と語る。 「仙台駄菓子缶」の中身を製造したのは、1937年創業の仙台駄菓子の老舗「日立家」(仙台市宮城野区)。こけしの形をした「みそぱん」や、仙台伝統の青いだるま「松川だるま」をイメージした青い「だるま飴」などが入っており、東北の伝統を感じるお菓子を楽しむことができる。 今月からの発売で、「こけし缶」は限定180個、「仙台駄菓子缶」は400個を準備している。税抜き価格は、「こけし缶」が1800円、「仙台駄菓子缶」が800円。 (安藤歩美/THE EAST TIMES)