「学区内での引越しもできない!」「子どもの髪型も自由に決められない!」国会答弁で次々と明らかになった「共同親権」導入案の摩訶不思議
進路や医療など人生に関わる問題も
実態を視覚的に浮き彫りにするため、項目(教育、医療、転居)ごとに政府答弁を図解する。 <教育> 進学先決定(願書提出)については、3月14日(衆議院 本会議)の米山隆一議員(立憲)に対する小泉龍司法務大臣(自民)の答弁で以下2点が明らかになっている。 ・別居親の同意を得ることが大原則である ・その例外として、期限が翌日に迫る場合はB(急迫の事情)に含まれる(=別居親の同意は不要) 要は、単独では期限前日まで願書提出すらできない。学校側の提出期限の考え方が「当日消印有効」ではなく「必着」の場合、昨今の郵便配達の所要日数増加を踏まえると願書は余裕を持って提出したいが、それすら許されない。最悪の場合、前日に不測の事態が起きれば願書を出し損ねる。 この問題は、障がいやハンディキャップを持つ子の場合、さらに深刻になる。4月2日(衆議院 法務委員会)に本村伸子議員(共産)が特別支援学校への進学・進級であっても別居親の同意が必要になるのかを質問したところ、小泉龍司法務大臣(自民)は先ほどと同じ趣旨の内容を答弁。 具体的には、入学手続き等の期限が迫っている場合はB(急迫の事情)に当たるとしたのだ。しかし、この政府答弁は、子に合った特別支援学校を見極めるためには1年以上かけて検討するケースもあるという実態と大きく乖離している。最悪の場合は、別居親の同意が得られないために同居親と子が進学を希望する特別支援学校の手続きを進められないという深刻な事態が懸念される。 (*修学旅行については前回記事で紹介したため本文での説明は割愛) <医療> 子に合う薬を試すために日常的に服用する薬を変更することについては、4月2日(衆議院 法務委員会)に本村伸子議員(共産)に対する小泉龍司法務大臣(自民)の答弁で以下2点が明らかになっている。 ・子の心身に重大な影響を与えないのであればC(日常行為)に含まれる(=別居親の同意は不要) ・ただし、その例外として、子の心身に重大な影響を与える場合はDに含まれる(=別居親の同意は必要) 日常的に服用する薬を変更するのだから、子の心身にはほぼ100%の確率で何らかの影響を与えるだろう。それにもかかわらず、「重大な影響」がいったい何なのかは依然として曖昧なのだ。このままでは、別居親に同意を得るべきケースなのか否かを同居親や医療機関は判断できず、混乱に陥る可能性がある。 (*手術については前回記事で紹介したため本文での説明は割愛)
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