関西は細くてあっさり、北海道は太くてこってり?「かりんとう」の地域差を東京カリントに聞いてみた
食べればどこか懐かしい気分になるおやつ「かりんとう」。日常の定番おやつとしてはもちろん、実家や祖父母の家で食べた思い出がある人も多いはずだ。 【写真】寒い地域で好まれている黒くて太い、こっくりとした甘さのかりんとう そんなかりんとう、実は地域によって主流となる味わいや形に違いがあり、人によって思い浮かべるものが異なることも。こっくりとした甘さの太いかりんとうや、素朴な味わいの細いかりんとうなど、さまざまな種類が存在するが、なぜこのような地域差が生まれたのだろうか。 今回は、かりんとうの各地域の特色について、業界シェアNo.1である東京カリント株式会社 マーケティング部の金子淑子さんに話を聞いた。 ■寒い地域で好まれるかりんとうに共通点あり! かりんとうのルーツを紐解くと、飛鳥時代にまでさかのぼると言われている。遣隋使によって中国から伝わってきた“菓子”に由来し、当時は貴族が食べるものとして扱われていたそうだ。しかし江戸時代に入ってからは一般庶民にも広まり、各地でいろいろな形のものが作られるようになったのだとか。 「情報や物流網の発達により、全国各地のかりんとうが手軽に食べられるようになりましたが、今でも地元だけで親しまれている味はあります。特に寒い北海道においては、高カロリーな食品が好まれるというのもあり、黒糖などを使用したこっくりとした甘さの太くて色が濃いかりんとうを筆頭に種類が豊富です。寒冷地である東北地方や長野県でも同様の傾向が見られますね」 そのほか、北海道や岩手県で親しまれている「うずまきかりんとう」は、岩手県発祥説が有力視されるも諸説あり、はっきりとしたことはわかっていないそうだ。 「ちなみに秋田県では、木の葉の形をした平たい板状のかりんとうが知られています。特に東北地方は地場のメーカーが根強く、手作りのかりんとうが多い地域のため、より特徴的な形のかりんとうが流通しているのかもしれません」 ■「奉天」「ねじねじ」地域に根付いた変わり種も 東京カリントが本社を構える東京ならびに関東地方では、棒状の黒糖かりんとうを主流にさまざまな種類のかりんとうが出回っているという。では、上記以外の地域ではどのようなかりんとうが食べられているのだろうか。 「関西地方では、細くてあっさりとした味わいのものが親しまれています。東京カリントでは、かりんとうは生地を発酵させてソフトな食感になるように作りますが、関西のかりんとうメーカーでは、しっかりと生地をこねたハードな食感のかりんとうも販売されています。なかでも兵庫県には『奉天』(ほうてん)と呼ばれる、かりんとうを飴で巻いたお菓子があるほか、板状のかりんとうやうずまき模様など、いろいろな形があるようです」 また、九州地方でも硬めの食感のかりんとうがあり、中華街がある長崎県では螺旋状のかりんとうが販売されている。これは中国から伝わってきたと言われており、硬くサクサクとした歯ごたえが特徴。そのねじった形から、長崎県では“ねじねじ”の愛称で親しまれている。 「かりんとうの起源について、弊社では中国から伝わった説を有力視していますが、九州地方の企業さんはまた違った説を提唱されていることもあり、諸説あります。また、これらの説は必ずしも文献や研究によって裏付けられているわけではなく、地域に根ざした伝承や個人の見解に基づくものが多いため、その起源は今もはっきりとはわかっていません」 東京カリントではさまざまなかりんとうを扱っているが、どの商品も地域による売り上げの差はそれほどないという。これについて金子さんは、「前述のとおり、情報や物流の発達によって昔ほど地域差はないのかもしれませんね」と推測。しかし、地域によって愛されてきたかりんとうは確かに違うようだ。 普段から食べ慣れているかりんとうが、みんな当たり前の形ではなかったことに驚いている人もいるかもしれない。冬休みの旅行や帰省の際に、各地域のかりんとうの味を楽しんでみては? 取材・文=花田実咲(にげば企画)