久大線を走る新型観光列車「かんぱち・いちろく」のおもてなし
大分県・福岡県
ゆふ高原線の愛称を持つ久大(きゅうだい)線を走る「かんぱち・いちろく」は2024 年4月にデビューしたばかりの新型観光特急だ。列車名は久大線全通に尽力した麻生観八氏と由布院への鉄道を誘致した衛藤一六氏に由来し、博多駅発別府駅行きが「かんぱち号」、別府駅発博多駅行きが「いちろく号」として運行している。 別府から博多まで約5時間の「いちろく号」の旅を満喫した。ホームに現れたのは漆黒に塗られた3両編成のディーゼルカー。ロゴやエンブレムなど金の装飾が施されていて高級感があり、運気も上がりそうだ。
1号車はソファ席とボックス席、3号車はボックス席が並び、2号車は共用スペース「ラウンジ杉」と、1・3号車の運転室隣に畳個室がある。 「かんぱち・いちろく」のデザインは霧島神宮駅のリニューアルも手がけた鹿児島のデザイン会社「IFOO(イフー)」が担当した。各号車にテーマを持たせ、ラウンジのカウンターには全長8メートル近い杉の一枚板を使う。 1号車の重厚感のある赤いソファ席に腰を下ろした。別府駅から大分駅までは別府湾に沿って日豊線を南下し、大分駅から久留米駅まで非電化路線の久大線を走る。大きな窓には由布岳や玖珠(くす)川など、沿線の自然豊かな風景が映し出された。
車内で提供される食事は運転日(曜日)によって変わり、客室乗務員が座席まで運んでくれる。「かんぱち・いちろく」に立ち上げから携わったJR九州営業部の松本拓也さんは「食事に関しては足で稼いで福岡と大分の店に決めました。和食4店にイタリアンとフレンチです。日田杉を使った専用の重箱に、季節に応じた食材を使用して各店に腕を振るってもらいます」と胸を張る。この日は大分市に店を構える「裏舌鼓(りぜっこ)」の和食。華やかで繊細な盛り付けながらボリュームもあり、おいしくいただいた。 もう一つの楽しみはおもてなし駅。天ヶ瀬温泉の玄関口となる天ケ瀬駅では地元の特産品のほか、湯につけると文字が浮かび上がる「湯みくじ」も販売。駅で運勢を占うユニークな試みだ。日田駅を過ぎて福岡県に入り、うきは駅で約20分の停車中、ホームの物販コーナーに並ぶ梨や柿などの果物を買う人もいた。一の瀬焼の陶器が入ったカプセルトイが人気で、運試しにおすすめしたい。 車窓には稲刈り前の田園風景が広がっていた。久留米駅を過ぎると筑後川を渡る。移動そのものが楽しみとなった「いちろく号」の旅。思い出を胸に刻んで列車を降りた。 文・写真/松尾 諭 ◎特急「かんぱち号」 博多駅→由布院・大分・別府駅/月・水・土曜運転 ◎特急「いちろく号」 別府・大分・由布院駅→久留米・博多駅/火・金・日曜運転 ※2025年2月28日出発まで ◎旅行料金(食事を含む) BOX席・ソファ席は1万8000円、畳個室は2万3000円 ※専用ホームページから申し込む。一部の旅行会社でも販売する。駅のみどりの窓口での申し込みは不可。 ※「旅行読売」2025年1月号の特集「ゆく年くる年 旅して開運」より