〈那須殺害から1カ月〉「目的は経営権よりカネだった?」捜査員も注目する、事件の8日後に「どれでもいいから店をキャッシュで買ってほしい」と“仲介業者”が近隣店舗にオファー。いっぽう宝島ロードの“現在”は…
東京・上野で約20の飲食店を展開していた「サンエイ商事」社長の宝島龍太郎さん(55)と幸子さん(56)夫妻が殺害され、栃木県那須町で遺体が焼かれて見つかった事件で、発覚から8日後の4月24日に、サンエイとビジネスで取り引きがあった人物がサンエイ系列の店舗の購入を別の飲食店経営者に持ち掛けていたことがわかった。 〈刺青写真ほか〉背中一面に“殿”と“姫”、腹には鶴…周囲がビビっていた関根容疑者の刺青全身と甘いマスクでマダムを手玉にとっていた20代のころの写真 約20の店舗のうち「どれでも」買ってほしいとの打診で、全店を処分する計画だったとみられる。事件は宝島さん夫妻の長女の内縁の夫である関根誠端容疑者(32)が宝島さんから経営の主導権を奪う目的で殺害計画したとの見方があったが、事件直後に持ち上がった店舗売却の動きに関根容疑者がかかわっていたなら、経営よりも財産を奪う目的のほうが大きかった可能性も出てくる。
「店を取られるくらいなら、こっちから取ってやるか」
事件発覚から1カ月、警視庁と栃木県警の合同捜査本部は5月14日に店舗売却を他経営者に持ちかけていた人物から事情を聴き、宝島さんが亡くなって社長不在のサンエイ側の誰から店舗売却の仲介を依頼されたのか、調べを進めている。 宝島さん夫妻の遺体は4月16日早朝に見つかり、同日中に宝島さんの身元が判明したが、幸子さんのほうは頭蓋骨が骨折するほど頭部と顔面を激しく殴打されており、DNA解析による身元特定まで1週間を要した。 遺体発見翌日の17日朝に、仲介役の平山綾拳容疑者(25)=死体損壊容疑で逮捕、殺人容疑で再逮捕=が警視庁に出頭。調べに対し、指示役の佐々木光容疑者(28)の求めで実行役の若山耀人容疑者(20)と姜光紀容疑者(20)を手配し、この二人に殺害と遺体の運搬・遺棄をするよう伝えたと供述。平山容疑者が自分の車を実行役の二人に遺体運搬用として4月15日夜に貸していたこともわかった。 合同捜査本部は佐々木、若山、姜の3容疑者を逃亡先の沖縄県などでそれぞれ発見し、死体損壊容疑で逮捕。さらに佐々木容疑者の供述などから、サンエイの幹部社員で宝島夫妻を補佐していた関根容疑者を主犯格とみて5月6日深夜に死体損壊容疑で逮捕。 殺害現場とされる空き家を管理していた不動産業者の前田亮容疑者(36)も同容疑で逮捕した。今後は平山容疑者以外の5人も全員、殺人容疑で再逮捕する方針だ。 関係者によると、サンエイ系列店のうち5店舗ほどは関根容疑者が運営し、売り上げも好調だった。昨年ごろからこれを快く思わない宝島さんが「おれの会社だからもっと(売り上げを)よこせ」と要求し、関根容疑者がこれに反発。「(店を)取られるくらいなら、こっちから取ってやるか」と口にするのを聞いた知人もおり、経営の主導権争いが顕在化していた。 このため捜査本部は、関根容疑者が事業の主導権を奪う目的で殺害を計画した可能性があるとみている。