歴代首相4人輩出の「保守王国」群馬に異変、何が起きた? 前橋市長選で現職完敗、衝撃の背景探る
今年2月4日夜、群馬県の県庁所在地で衝撃が走った。この日投開票だった前橋市長選で、野党系の新人が自民、公明両党推薦の現職を大差で破り、初当選したからだ。群馬は歴代首相4人を輩出し「保守王国」と呼ばれる。今回起きた異変は、今も尾を引く。 【写真】前橋、初の女性新市長が登庁 市制132年、現職破った小川氏
自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件、前回2020年の市長選で保守分裂したしこり―。さまざまな敗因が指摘される中、一体何が起きたのか。現職が完敗した背景を探った。(共同通信=岩沢隼紀) ▽くすぶる保守分裂の火種 昨年9月12日、前橋市議会の本会議場。現職の山本龍氏(64)は今年2月の任期満了に伴う市長選へ4回目の当選を目指し、出馬の意向を表明した。「まだやり残したことがある。これからも続けたい」 この出馬表明を受け、焦点は自民党群馬県連の対応へ移った。なぜなら前回2020年2月の市長選は保守分裂選挙となったためだ。 前回の市長選に出馬した6人のうち、山本氏を含む3人が自民党籍を保有。県連はいずれにも推薦を出さず、自主投票を決めた。結果は、山本氏が3選を果たし、次点だった自民党の元県議の岩上憲司氏に約1万票差をつけた。 前回の市長選直後、保守分裂のしこりは市議会内に表れる。選挙戦で岩上氏を支援した市議の一部が、市議会の新会派「前橋高志会」を結成。市政運営を巡り、山本氏と目立った対立は見られなかったものの、分裂の火種はくすぶり続けた。
こうした状況を踏まえ、山本氏も4選を狙うに当たり、高志会に協力を要請。高志会内も「今回は一枚岩だ」として異論は出ず、自民党県連も昨年10月、山本氏の推薦を決めた。公明党県本部や多数の業界団体も山本氏を推薦し「オール保守態勢」の構築が進んだ。 ▽リベラルのエースが出馬 3期12年の実績を持つ現職に対し、野党側の動きは必ずしも早くなかった。山本氏の出馬表明から2カ月半後の昨年11月26日。群馬県議会の野党系会派「リベラル群馬」に所属する新人の小川晶氏(41)が、今回の前橋市長選への立候補を明言した。「市民が納得できる市政をつくりたい」 小川氏は昨年4月の県議選の前橋市選挙区(定数8)でトップ当選。2011年の初当選以来、4回の当選を重ね、保守地盤が強い群馬で「リベラル系議員のエース」(立憲民主党県連幹部)として将来を嘱望された存在だった。 今回の市長選に向け、小川氏は「市民党」を掲げる。特定の政党に推薦を求めない代わり、立憲民主、国民民主両党を支持する連合群馬の推薦や、共産党前橋地区委員会などでつくる市民団体「民主市政の会」の自主的支援を得た。