「ナミビアの砂漠」山中瑶子監督の映画作り 「自分の気持ちを素直に話すようになったら、いいことしかない」
――過去のインタビューで、山中監督は日々メモを取っていて、それらをヒントに脚本を書くと答えられていたのですが、今でもそうですか?
山中:最近は変わってしまって、なんかもう、一日中映画のことを考えていると辛いというか、生活がおろそかになってしまったんです。
――昔は、寝ても覚めても映画のことを考えていたんですか。
山中:四六時中考えていました。と言うとかっこいい感じがしますが、なんか強迫的な感じで……移動中も常にアンテナを張っていて、映画になりそうだと思ったらメモをして。でも、映画以外のことは全ておざなりでした。0:100くらいの、極端な身の振り方をしてしまっていて、そんな生き方に違和感を持ち始めたんです。何でも映画にしようとする思考は、身も心もかなり危険なのではないかと。それで、自分の中のバランスが少しずつ変わっていきました。今はメモも最小限で、移動中は頭を空っぽにしたくてスイカゲームとかしてます(笑)。
――山中監督は大学を中退後、SNSでキャストやスタッフを集めて初監督作「あみこ」を完成させるなど、独自の方法で映画監督という道を切り拓いています。映画監督になりたい、と思っている方に、今の山中監督ならどんな言葉をかけますか?
山中:自分がやってきて良かったと思うのは、ジャンルを選ばずに、とにかくたくさんの映画を見て、活字を読んできたことです。私は映画を作る時、毎回とにかく好きな映画をたくさん見て、気持ちを高めてから作ります。今回はモーリス・ピアラ、ロウ・イエ、ジョン・カサヴェテス作品を中心に見ました。小中学生の時、娯楽が禁止の家だったので本ばかり読んでいたんですが、その頃のおかげで今でもセリフを書くのはあまり大変ではないかもしれません。学校など映画を作ることについていろんな学び場がありますけど、映画作りって人に教わることでもないし、私は映画と活字にたくさん触れるだけでも、自分の言語を見つけることができるのではないかと思っています。