「ナミビアの砂漠」山中瑶子監督の映画作り 「自分の気持ちを素直に話すようになったら、いいことしかない」
山中:そのときどきによりますけど、自分の中ではっきり「違う」っていうのは分かります。今回、俳優には決めた動線とセリフさえ守ってくれたら後は好きにやってもらいたかったので、いろいろ言わずに最低限必要なことを伝えて。テイク数も2、3テイクとか、そんなに多くないです。
――金子大地さんが演じるハヤシとの喧嘩のシーンも、非常に迫力があるというか、気持ちよく見てしまいました。
山中:今回、けがのないようにアクション指導の方に入っていただいて、事前に何回かリハーサルをしました。河合さんも金子さんも身体の使い方がうまくて、こうしたらプロレスみたいに見えていいんじゃない?とかいろいろアイデアを出し合って試して、あらかじめきちんと型を作って組み手のような形で喧嘩のシーンを構成しました。
編集について
――編集期間は約3週間とのことですが、どのように進めていったのでしょうか?
山中:最初は編集の長瀬万里さんが全カットをただつなげてくれた「棒つなぎ」状態のものを見たのですが、それが3時間くらいあって。そこから、適切な尺と必要なカットを探っていく、映画の形にしていく作業は一緒にやりました。毎日違うランチを食べに行って編集以外の話をしたり、煮詰まったら休日を作って映画館で他の映画を見ることで一度離れようとしたり。編集作業って波があるんですけど、毎日コツコツいじっていくと、どこかで「突破した」と感じられるときがあって。1コマいじるだけで、印象がガラッと変わるんですね。その調整がうまくいって、映画がパッと華やいだ瞬間はすごく気持ちいいです。
――本作では、どのタイミングで「突破した」と感じましたか?
山中:これは初めての経験だったんですけど、最初の棒つなぎからだいぶ面白かったんです。それが逆に困ってしまって、すでに面白いものをそれ以上どう持ち上げればいいのか分からなくて。今回はアクションや疾走感のある動きが多かったので、細かい話ですけど、1秒24フレームのうち2コマだけ削るとか、数フレーム単位の調整を丁寧にやることを繰り返して、尺は変わっていないのに、数コマで印象が全く違うものになるという編集体験をしました。