「キャバレーで軍歌」南こうせつが振り返る55年間、思い出すのは伝説の“国立でのコンサート”
そこから南は知り合いのミュージシャンに声をかけた。 「まず、ユーミンや加藤和彦さん、確か財津和夫さん……。実はこういう企画があって、日本民間放送連盟が協賛したいっていうんだけど、どう思うって聞いたんです。そうしたらユーミンが“私たちはラジオから出てきたから、それはOK。でも一夜限りのコンサートでテレビ放送はしない”という条件で夢のコンサートは実現しました」
気がつくと人生の終わりが見えてくる
開催されたのが'85年6月の『国際青年年記念 ALL TOGETHER NOW』というチャリティーライブ。第一線で活躍するミュージシャンが、全放送局の力添えで顔をそろえた。 「はっぴいえんど、ユーミン、オフコース、吉田拓郎、チューリップ、さだまさし、THE ALFEE……すごいでしょ(笑)。トリは佐野元春だったんだけど、そこに桑田佳祐が飛び入りしてね。お客さんも大興奮でした」 これまで精力的に活動してきた南。この先、何をしたい?と聞くと、意外な言葉が返ってきた。 「もうね、何かをやってやろうというのではなく、人生の流れの中で良いも悪いも全部抱きしめて、今日をそのまま受け入れて、ボーッと生きられたら良いと思っています。日常を振り返ると、世の中は何か目に見えないモノに急かされて、暇になると不安になって知らないうちにスマホに向かって日々を過ごす。いつになったらぐっすり眠り、美味しいご飯をゆっくりと食べられるやら……。 いつか親しい人たちと夢を語り、歌を歌いと願いつつ、とりあえず今は忙しいので近いうちにと先送りにしていると、1年が過ぎ2年が過ぎ、10年がたち、気がつくと人生の終わりが見えてきます。だからもっと自分を愛し、他人を許し、人が人になってゆく未来を夢見て生きていきたいものですね」 取材・文/蒔田稔