ひろゆき&武井壮の百獣の王vs論破王⑪ 武井壮が陸上十種競技で日本一になるためにとった秘策とは【この件について】
ひろ とはいえ、武井さんは十種競技で日本一になったじゃないですか。何が強みだったんですか? 足が速いのはもちろんですけど、それだけじゃ勝てないですよね。 武井 心理戦を制したことだね。 ひろ というと? 武井 ほかの選手にめちゃめちゃプレッシャーをかけるんだよ。例えば、1500m走が十種競技の最後の種目だから、みんなすでに疲弊しきっているの。それでスタートの前にライバル選手のところに行って「あれ? 俺、今日全然疲れてねーわ。これならめっちゃいいペースで1周目入れそうだ」とボソッとしゃべる。 ひろ 揺さぶるわけですね。 武井 もっと直接的にも言ってた(笑)。「そういえば、おまえと俺って今、何点差だっけ? あ、200点差か。じゃあ、おまえを30秒離したら俺の勝ちだな」「俺は1周目60秒で入るから、そのペースで行くと、おまえがこれまでのベストを出しても50秒は差が開くな。ということは、おまえは自己ベストより10秒速くないと俺に勝てないのか。じゃあな!」って言って戻る。 ひろ うわ(笑)。でも、競技の合間の心理戦って、超重要ですよね。 武井 めちゃくちゃ重要。あと、俺の得意の100m走で大幅にリードすることで、テクニカル系の種目の練習をいっぱいやってきた選手にプレッシャーを与えるの。すると「やべえ、武井にすごいリードされている。次の種目で記録を伸ばしておかないと負けるな」と焦るでしょ。で、走り幅跳びや砲丸、棒高跳びという種目のときに本来の力が出なかったり、ファウルをしたりする。 ひろ 力んだり、無理しちゃったりするんですね。 武井 そう。で、そういうやつのところに行って「今、惜しかったな。7m30cmも跳べてたのに。でも、ファウルしたら0点だから。次、頑張れよ!」とか言って帰るわけ。 ひろ めっちゃ嫌なやつ(笑)。 武井 めっちゃ嫌なやつだったと思う(笑)。で、1日目の最後の種目は400m走なんだけど、みんな疲れてるから、そこで「おまえ、なんか疲れた顔してるな。大丈夫か? 俺はさっき300mを走ってきたけどすごい調子いい。今日ベスト出るわ」みたいなことを言ってさらにプレッシャーをかける。 ひろ うわわ。 武井 あと、疲労を軽減する作戦も取ってた。 ひろ どんな作戦なんですか? 武井 最終種目の1500m走は距離的にも体力的にも、そしてメンタル的にもめちゃめちゃしんどいの。だから第1、第2、第3、第4コーナーにそれぞれ俺のタイプの女のコに座ってもらって、しかも「武井さん、ファイト!」って言って応援してもらって、疲労を感じなくする(笑)。 ひろ 気持ちいいくらいに単純ですけど、効果あるんですか(笑)。 武井 すごい効果あるよ。しかも、フォームも安定する。好きなタイプのコにカッコいいところを見せようと思うから顔が引き締まるでしょ。そうするとフォームが不思議と安定するんだよ。 ひろ そうやって限界を突破していたわけですね。 武井 しかも、トップで走っている選手は競技場のビジョンに映されるのよ。で、俺は意識的に精悍な顔で走っているから「あいつ全然疲れてねえじゃん」「こりゃ勝てねーわ」ってほかの選手の心が折れる。 ひろ そっか、そこで勝負から降りちゃうんだ。 武井 俺が日本選手権で優勝したときは、1500m走が始まるまで4位だったの。で、上位の3人全員を30秒以上離さないと勝てなかったけど、全員に50秒以上の大差をつけて大逆転勝利したんだよ。 ひろ 見えないところでの戦いも含めて十種競技の奥深さがわかりました。ありがとうございました。 *** ■西村博之(Hiroyuki NISHIMURA) 元『2ちゃんねる』管理人。近著に『生か、死か、お金か』(共著、集英社インターナショナル)など ■武井 壮(So TAKEI) 1973年5月6日生まれ。東京都出身。タレント、元陸上十種競技日本チャンピオン。格闘技、野球、ゴルフなど様々なスポーツの経験を持つ。公式Webサイトは【】、公式Xは【@sosotakei】 構成/加藤純平(ミドルマン) 撮影/五十嵐和博 ヘア&メイク/奥野誠