奪われたお宝を取り戻せ…海外に流出した文化財返還に本腰入れる中国
中国から海外へ流出した文化財を、中国政府が取り戻そうと本腰を入れ始めたという。「中華民族の長い歴史、民族の尊厳を重視する、習近平指導部の路線に、ピタリと一致している」と語るのは、東アジア情勢に詳しい、飯田和郎・元RKB解説委員長だ。12月2日に出演したRKBラジオ『田畑竜介 Grooooow Up』でコメントした。 【写真で見る】文化財返還の強化に向けて法改正 ■文化財返還の強化に向けて法改正 中国の本気度、姿勢をアピールする象徴的なシーンが今年11月にあった。 『中国の習近平主席は、北京を訪れたイタリアのマッタレッラ大統領と共に、イタリアから返還された中国の文化財を鑑賞しました。イタリアの文化遺物保護当局は、これまでに押収した、中国のものとみられる歴史的文物56点について、中国政府に通知しました。中国側は一点ずつ、鑑定した結果、中国から流出したものと確認され、このほど、中国へ返還されました。56点の中には、中国文明の起源を探るうえで重要な新石器時代の陶器や、漢、唐、元それぞれの時代につくられた陶器が含まれ、いずれも当時の社会を映し出す貴重なものです。』 引用:新華社通信ニュースサイト 今回、中国に返還されたお宝の中には、イタリアの古美術品市場に出展されたものもあったそうだ。習近平主席はイタリアの大統領に「イタリアは、すでに約800点の中国の文化財を中国に返した。文化財の返還において国際協力の新たな模範を示した」と述べ、イタリアを賞賛している。 面白いことに、これと同じ日に、中国の国会がある法律を決議した。文化財保護法の改定だ。2025年3月に施行される。この改正された文化財保護法の第81条は、「文化財の償還と返還の分野における国際協力の強化」を盛り込んでいる。つまり「盗難、また不法に海外へ渡った失われた文化財を返してもらうよう、政府は努める。この権利には時効はない」と定めている。 悠久の歴史を持つ中国。海外へ流出した歴史的文化財は多い。これは中国メディアの報道だが、UNESCO(=国連教育文化科学機関)の不完全な統計によると、世界47カ国、218の博物館に、167万点の中国で製造された文化財があるという。博物館という公的な施設だけでも、これだけの数字。この報道によると、個人や民間が所有していると思われる文化財は、その167万点の10倍になるだろうと推定している。