「落ち度ない娘、なぜ」 常総横転死傷 両親「危険運転」で起訴を 茨城
茨城県常総市の国道で2023年5月に大型トレーラーが横転し2人が死傷した事故で、娘=当時(21)=を失った両親が、自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)などの疑いで書類送検された運転手を同罪で起訴するよう求めている。墓前に手を合わせる日々を送りながら「落ち度のない娘が、なぜ命を奪われなければならなかったのか」と訴えている。 事故が起きたのは同年5月19日午後4時55分ごろ。常総市水海道山田町の国道294号で、大型トレーラーが対向車線にはみ出して横転し、軽乗用車を運転していた同市の栄養士、星有里紗さん=当時(21)=が死亡。乗用車の男性=当時(61)=も重傷を負った。 両親の伸一さん(56)とひろみさん(57)によると、有里紗さんは高校生の頃から夢だった栄養士となり、4月から県内の児童養護施設で働き始めたばかりだった。 伸一さんの携帯電話に連絡が届いたのは事故発生の約1時間後。嫌な予感に身を震わせながら家族と病院に向かうと、緊急外来室のベッドに横たわる娘の姿が視界に飛び込んできた。「眠っているようで、今にも起きそうだった」(ひろみさん)。しかし、目覚めることはなかった。 県警は昨年9月、トレーラー運転手の30代男性が摩耗したタイヤと知りながら走行していたと判断し、危険運転致死傷容疑で水戸地裁下妻支部に書類送致。車両管理に落ち度があったとして、同県笠間市の運送会社役員の男性を業務上過失運転致死傷容疑で同支部に書類送致した。 両親は事故から1年以上が過ぎた今も、毎日欠かさず墓参りに出向く。伸一さんは「単なる事故ではない」と非難。ひろみさんも「(運転手らには)正直に話してほしい」と切実な表情で語った。代理人弁護士は、「運転手と管理会社の責任は逃れられない。厳しい罪を求める」と語った。 同法の危険運転致死傷罪は、飲酒運転や速度超過、赤信号無視などのケースを、重大な死傷事故を引き起こす危険が高い「危険運転行為」として規定。人を死亡させた場合は1年以上20年以下、負傷させた場合は15年以下の懲役刑を科すと定めている。一方、過失運転致死傷罪は7年以下の懲役刑などが科される。 水戸地検は「一般論として危険運転致死傷から過失運転致死傷になる場合はある」としている。
茨城新聞社