50-50に迫る大谷翔平の“46盗塁”は評価されてない? 米記者が指摘「10年の印象で、盗塁が簡単になったと感じるだけ」
メジャーリーグもいよいよレギュラーシーズンが佳境を迎えている。 ポストシーズン進出や地区優勝争いが激しさを増すなかで、MVPを巡る議論が活発化している。目下、ナショナル・リーグの筆頭候補と見られているのが、大谷翔平(ドジャース)だ。 【動画】二盗!三盗!大谷翔平が「44‐46」を達成するシーン ドジャース加入1年目は、右肘に執行した手術の影響もあり、フルタイムの指名打者(DH)として起用され、「打者専任」。それでも大谷はここまで安定した数字を維持。現地時間9月6日時点で打率.290、44本塁打、46盗塁、99打点、OPS.988とリーグトップクラスの好成績を残し、史上初の「シーズン50本塁打・50盗塁」も達成間近だ。 仮に大谷がMVPとなれば、DH専任選手史上初だ。 過去、DHの選手がMVPになれなかったのは、近年のMVP投票において最重要視されている指標「WAR」(打撃、走塁、守備、投球を総合的に評価して選手の貢献度を表す数値)が影響している。同指標は、他ポジションと貢献度を比較する際にDHは例外なくマイナス評価が下されるのだ。よって守備につく野手より圧倒的な打力を見せなければならない。 実際、現時点のMVP争いでライバルと目されるフランシスコ・リンドーア(メッツ)やケテル・マルテ(ダイヤモンドバックス)は、守備におけるWARが高い。 それでも大谷に対する評価が揺るぎないのは、打撃はもちろん、走塁面でチームにもたらす貢献度が高いと考えられる。やはりシーズン50盗塁を目前にする走力は目を見張るものがある。ちなみに“史上最強のDH”と言われたデビッド・オルティス氏がシーズン54本塁打、137打点を記録してMVP投票3位となった2006年の盗塁数は「1」だけである。 無論、ルール改変の影響はあるだろう。23年のピッチクロック導入とともに始まった投手による牽制回数(3回)の制限、さらに各ベースの拡大など走者にとってポジティブな面はある。 だが、現地識者の間では大谷の走力を評価する声は尽きない。MLB公式ネット局『MLB Network』の討論番組に出演したトム・ベルドゥッチ記者は、「たしかにベースの拡大や牽制球の制限によって影響はあった」と指摘した上で「ただ、オオタニに対する意見は、人々がこの10年間で盗塁が少なかったことに慣れ過ぎてしまっただけだ」と断言する。 ベルドゥッチ記者は、今季のメジャーリーグ全体の盗塁企画割合の増加(0.51→0.74)を指摘。その数字が1988年(0.79)や1996年(0.71)とほとんど変わらないと比較し、こう続けている。 「盗塁の環境は実は80年代や90年代とそれほど変わってはいない。極端に少なかったこの10年間の印象で、『盗塁が簡単になった』と感じるだけだ。誰かがシーズンが終わった時に言うかもしれない。『あぁオオタニはルールを利用しているだけだ』と。でも、私は最近の野球界で選手たちが走らなかったことに慣れてしまっただけだと言いたい」 打って、走って――と、歴史を変えようと快進撃を続ける大谷。果たして、彼はキャリア3度目の“栄冠”を手にできるのか。受賞の瞬間まで議論は続きそうだ。 [文/構成:ココカラネクスト編集部]