何度も世間を騒がせた女の「静かすぎる」旅立ち…伝説のストリッパー・一条さゆりの「最期」
最後の願い
家族はもちろん友人や知人の誰も周りにいなかった。何度も世間を騒がせた彼女は、これ以上ないほど静かに旅立った。私は加藤に聞いた。 「お葬式はどうなりますか」 「稲垣さんと相談します。立派なお葬式をしてあげたいんです」 「せめてもう一度だけ、会いたかったな」 「アフリカからの絵はがき、嬉しそうに読んでいましたよ」 私の手元には、手土産にしようとアフリカで買った小さな木彫りの人形が残ったままだ。 加藤はうつむきながら言った。 「化粧をしてあげたいんです」 1年前の夏、キューバでの取材旅行で買った外国製の香水をプレゼントしたとき、一条はそれを左手甲に軽くふりかけ、鼻を近づけると、「ふーん、いい匂いやね」と言った。 その様子を思い出しながら私は思った。加藤が化粧をしてくれるのを、一条は心待ちにしているはずだ。 『「5000円」を借りて「3000円」だけ返しに来る..元保護司が語る伝説のストリッパー・一条さゆりの意外な「一面」』へ続く
小倉 孝保(ノンフィクション作家)