何度も世間を騒がせた女の「静かすぎる」旅立ち…伝説のストリッパー・一条さゆりの「最期」
当直医とのひと悶着
絶対に入れるなと主治医から言われているのではないか。そう感じさせる剣幕だった。 過去にも入院中の彼女に会わせろと言ってくるファンがいた。それを考えると、病院が警戒するのも無理はない。 一条はこのところ、家族と連絡を取っていない。親族がすぐに遺体を引き取りに来る状況にはない。 彼女は解放会館のハトについて話したとき、「あたしは賑やかなのが好きやった」と言っていた。その彼女が、すぐそこにたった1人で横になっている。それを想像するとやりきれない。一言でも声を掛けてあげたい。 釜ケ崎解放会館の窓から私の名を呼び、「また、来て、ちょうだいねー」と叫んだ彼女の声が聞こえる気がする。 「池田さんは家族とはすぐに連絡が取れません。ちょっとでいいですから、会わせてください」 よほど執拗に頼み込んでいたのだろう。医者は突然、怒りだした。 「あなたは何の権利があって会わせろというのか。家族以外はダメ。ダメと言ったらダメだ」 「権利も何もないんです。お願いしているんです」 当直医は聞こうともせず、すたすたと行ってしまった。
「ここまで悪くなっているとは」
玄関前でうなだれて長椅子に座っていると、加藤がやってきた。彼女は一条から緊急連絡先に指定されていた。病院から「池田さんが亡くなった」と連絡を受けた加藤は、病院で死亡を確認した後、いったん帰宅して関係者に連絡を済ませ再び病院に戻ってきたようだ。 私は加藤と2人で病院を出て、近くの喫茶店に入った。日は傾き、夕陽が差しかけている。アイスコーヒーの氷をストローでかき混ぜながら、私は言った。 「ここまで(一条の体調が)悪くなっているとは思わなかったな」 「私もそうです。こんなに早いとは思いませんでした」 一条はちょうど1ヵ月前の7月3日、肝硬変が悪化して入院していた。肝機能は21日ごろから急激に低下し、昏睡状態になった。亡くなったのは8月3日午前9時55分、死因は肝不全だった。加藤が病院に駆けつけたとき、一条はすでに息を引き取っていた。