日産はなぜ[キューブキュービック]みたいな小さい3列シート車を作らないのか?
■このクラスで求められる実用性と扱いやすさに欠けていた、キューブキュービック
日産の3列シートコンパクトを考えるうえで外せないのが、キューブキュービックの失敗だ。2002年10月に登場した2代目「キューブ」から遅れること11ヵ月の2003年9月、日産は、キューブのホイールベースを170mm伸ばし、折り畳みできる3列シートを装備した「キューブキュービック」を追加した。 日産としては、デザインがよく、当時大人気となっていた2代目キューブをベースとすることで、当時すでに人気モデルだったモビリオやシエンタの対抗馬にしたかったのだろう。しかし結果は、見事に撃沈。 「キューブ(=立方体)」のデザインを優先したことで、ホイールベースをあまりのばすことができず3列目シートが激狭だったこと、そして、後席ドアがスライド方式ではなくヒンジ式だったことなどが原因だと思われる。キューブキュービックは、このクラスで求められる実用性と扱いやすさに欠けていたのだ。
■3列シート車はセレナがあればいい、と考えているのでは
ただ、いま日産がこの3列目シートコンパクトカーにチャレンジしないのは、キューブキュービックの失敗がどうこうではなく、やはり、3列目シートコンパクトカーは、国内専売モデルとなってしまうことにあるのだろう。日産はここしばらく、海外で売れるクルマ以外は登場させていない。 道路や駐車場は狭い日本ではコンパクトカーが人気の中心だが、コンパクトでありながら、いざというときにしっかり多人数乗車ができたり、家族でレジャーに出かけたりといろいろ便利に使えるマルチパーパスさも求められる。何でもかんでも詰め込むのは日本独特の傾向であり、大人数ならばそれなりの大型車を求める海外では、そんなコンパクトカーは求められない。 日産としては、日本で絶対に売れる確証がもてないクルマには、余計なリソースを割くことはできないのだろう。コンパクトSUVである「キックス」も、もともとは南米や東南アジアをターゲットに開発されたものであり、タイ生産のものが日本に入ってきている状況だ。e-POWERはいいパワートレインだと思うが、キックスのデザインやパッケージングがなんだか日本人にはしっくりこないと感じるのはそのせいだろう。 新型のコンパクト3列シート車を出したところで、既存のノートやノートオーラ、サクラの販売台数が減るだけ、という懸念もあるのかもしれない(そんなことはないと思うが)。こうしたことから、日産は、3列シート車はミドルクラスミニバンのセレナがあればいい、と考えているのだろう。 キューブのような面白いデザインとパッケージ性能でしっかりと実用性のある3列目シートモデルをつくることができれば、またこのカテゴリを盛り上げてくれる面白いモデルとなると思う。日本市場は世界的に小さい規模かもしれないが、日産の内田誠社長は社長就任時の会見で「日本は日産にとってのホームマーケット、非常に重要なマーケットだ」としていた。日産はもっと自信を持っていいと思う。ぜひともチャレンジをしてほしい。