お医者さんだけが知っている。Apple Vision Proを手術で使う理由
新人でも段取りを把握できるように
Gizmodo:情報の整理やプレゼンという点において、なぜ外科医療現場はこうも遅れをとってしまったのでしょうか? 医療は数兆ドルという市場があるわけですが、この遅れはどう影響するのでしょう? Masson氏:IT医療がどう発展してきたのかを思うと、懐古的な気持ちになりますね。患者が来て、私たちが診て治療して…。現場で発展したのって、カルテやデータの管理が電子になったくらいじゃないでしょうか。それ以上複雑なIT医療はあまりないのかな。私としては、将来的には次に何が必要かを予測解析していく医療になってほしいですけどね。脳にコイルを入れたり、義足を開発したりは、近代の外科医療でも注目されることでしょう。でも、その医療の根幹にあるものはつまらないから、なかなか焦点が当たらないのです。 Gizmodo:eXeXのソフトウェアはどういう働きを? Masson氏:例を挙げてみましょう。手術には何千というツールや消耗品を使います。手術助手はこれら多くの道具をいつどう使うかを考えねばなりませんが、それは複雑なパズルのピースを合わせるように大変なことなのです。例えば術中に外科医が「ドリル」と言ったとします。助手が「どのドリル?」と聞き、外科医が「いつもこういうときに使ってるやつ」と答えたとします。外科医がこういう手術のこういうときに使ういつものドリルと言っても、新しい助手ならわからないでしょう。「〇〇先生のこういうドリル」という情報を整理してまとめておく術がないのです。外科医の求めるツールが準備されておらず、取りにいかないといけない場合もあるでしょう。 私たちのソフトはこの助けになります。「こういうとき」とはこの手術のどの工程を指すのか、手術の進捗をリファレンスガイドで示すことができます。今何をしているのかがどんな助手にも明確になれば、手術プロセスもより整理されていきます。わかっていないと無秩序になりますが、手術という細かい作業中は、その無秩序が不安やストレスを煽るのです。 Gizmodo:ブレイクスルーとなる医療テクノロジーと聞いてイメージするものとは違いますね。 Masson氏:そうですね。外科医療で一番地味な部分の話なので。