彼の追う夢は彼1人の夢ではない―パレスチナ代表として五輪に挑む競泳選手
パレスチナ代表としてパリ五輪に挑むヤザン・アル・バウワブさんには目標がある。それは自らの泳ぎを通して、世界の注目をパレスチナに集め、パレスチナの人々の現状を知ってもらうことだ。 競泳パレスチナ代表 ヤザン・アル・バウワブ 「我々はパレスチナのアスリートとして、旗を掲げ、我々が参加しているということを人々に示すためにここにいる。たとえ困難に直面しても、我々はパレスチナの人々を代表するためこの場にいるつもりだ」 昨年10月7日にイスラエルとイスラム組織ハマスとの間で戦闘が始まって以来、ガザに住む230万人のパレスチナ人は極めて厳しい状況下に置かれている。 24歳のバウワブ選手は、サウジアラビアに逃れたパレスチナ難民の家庭に生まれた。彼の追いかける夢は、彼1人だけの夢ではない。 「父の夢は泳ぎ方を覚えて、競泳選手になることだったがその機会に恵まれなかった。父は難民で、食べ物にすらありつけなかった。だが神のご加護で、彼の夢は息子が実現した。父は、自分が到達できなかった場に私が到達できたことを誇りに思ってくれている」(バウワブ選手) 父親のラシャド・アル・バウワブさんは、パリ五輪はパレスチナを世界に広く知ってもらう機会だと話す。 父親のラシャドさん 「息子にとってこれは大きなチャンスだ。個人としては五輪に出場することは非常に困難で、彼にとって大きな目標達成だ。しかしもっと重要なのは、彼が抑圧された人々を代表していることだ。息子が(五輪の)プールにいることで、世界の人々はこうした抑圧された人々がパレスチナにいるということ、そしてヤザンがそれらの人々を代表しているということを理解してくれるかもしれない」