62年前に地図から消えた“幻の高原列車”を追う 軽井沢~草津温泉を結ぶ廃線跡はほとんど消滅、しかし林の中には…
長野県の避暑地・軽井沢と、群馬県の温泉地・草津を結ぶ鉄道が、かつて走っていたことをご存知だろうか。 【画像】山の中に埋もれた“幻の高原列車”草軽電鉄を写真で一気に見る 南北につづく全長55.5kmの路線を走る小さな客車が、浅間山のふもとを縫って避暑地や温泉地に向かう人を運んでいたが、1962年に廃線になった。それから62年が経過した“失われた線路”を訪ねた。(全2回の1回目/ 続き を読む) ◆◆◆ 1951年に公開された松竹映画「カルメン故郷に帰る」。高峰秀子が主演を務め、「総天然色映画」と謳われた日本初の“国産カラー映画”である。東京でストリッパーをしているリリィ・カルメンが友人を連れて帰ったふるさとでのできごとをコメディタッチで描く。 この作品の舞台になっているのは浅間山麓、北軽井沢。浅間山の雄大な姿と青い空、そして青々と繁る木々が鮮やかに描かれる。そして、村の人々の出迎えでカルメンと友人が降り立つ駅は、北軽井沢駅だ。草軽電気鉄道という、いまはなきローカル線の駅である。
当時の駅舎は…
北軽井沢駅は、全線で55.5kmという草軽電鉄のおおよそ中間、起点の新軽井沢駅から25.8kmの地点にあった。駅は、映画が公開されてから9年後、1960年に廃止された。いまでも往年の駅舎が保存されていて、その傍らには“カブトムシ”などと呼ばれていたという草軽電鉄の小さな電気機関車が実物大模型で復元、展示されている。(廃)駅の周りは北軽井沢の中心といったところだろうか。 北軽井沢の観光案内所があって、駅前広場だったであろう一角には北軽井沢の開拓を記念した碑が置かれる。その向こうには、小さなホテル。駅前商店街らしい空間もある。浅間山麓の高原らしい空気感の中、半世紀以上前に消えたローカル線、草軽電鉄の息吹がまだ残っている。
軽井沢駅前が草軽電鉄のスタート地点だった
草軽電気鉄道は、軽井沢駅前の新軽井沢駅を起点に浅間山の東麓を北上し、長野県と群馬県の県境を跨いで草津温泉駅まで続いていた。大半の区間で標高が1000mを超える、文字通りの“高原列車”であった。その廃線跡を、少し歩いて見よう。 はじまりは、軽井沢。北陸新幹線の軽井沢駅を降りて、大型ショッピングモールが広がる南側とは反対、北口に出る。駅前広場の傍らに、かつての草軽電鉄のターミナル、新軽井沢駅があった。が、そんな痕跡は微塵も残っていない。