膨大な映画を見て自身の血肉にするショーケンが謙遜「映画俳優と名乗るのはおこがましい」(本橋信宏)
【本橋信宏 萌える火曜日】#2 「『田原総一朗の朝食』という動画が密かな人気を博している」と、前回書いたところ、田原さんご本人からX(旧ツイッター)で礼をいただいた。 【写真】谷まりあがインスタで披露した新木優子との2ショットに「ルフィみたい」とファン仰天! 男が朝飯をつくり、胃に収めるシーンは、なぜか惹きつけられる。 1974年に放送された「傷だらけの天使」のオープニングで、主演の萩原健一が冷蔵庫から食材を取り出して、1人朝飯のシーンが若者たちに大受けしたことがあった。 テーマ曲(演奏・井上堯之バンド/作曲:大野克夫)の軽快なメロディーとともに、寝起きのショーケン(萩原健一)が冷蔵庫から食材を取り出し、トマト丸ごと、食卓塩を振りかけガブリ。コンビーフ缶詰を開けてガブリ。魚肉ソーセージをガブリ。牛乳瓶の口を丸ごと頬張り、蓋を開けて、飲む。 このオープニングシーン、急きょ決まったらしく、本編を撮っている合間、カメラマンの手持ちカメラで撮影したとショーケンが回想している。 1974年当時、街にはコンビニもなく、助監督が外に繰り出し、乾物屋で食材を買い求めた。だからコンビーフや魚肉ソーセージといった、しゃれっ気のないメニューだったのだ。 「傷だらけの天使」は、深作欣二、恩地日出夫、神代辰巳、工藤栄一といった錚々たる監督と市川森一、鎌田敏夫といった大物脚本家が結集した。ショーケンの弟分アキラを水谷豊が演じ、ポマードのリーゼントで、ショーケンを「兄貴ー」と慕うさまが、当時の若者たちにはやった。 実は水谷豊は「太陽にほえろ!」の第1回放送のゲスト出演で、マカロニ刑事役のショーケンが初めて逮捕する犯人役だった。このときの共演から、ショーケンがアキラ役としてドラマに招いたのだった。「傷だらけの天使」の視聴率はふるわなかったが(前衛的過ぎたのか)、その後何度も再放送されるたびに視聴率が上昇する伝説の番組になった。 前回コラムを読んだショーケンをよく知る関係者からも連絡をいただいた。 「ショーケンは膨大な映画を見て自身の血肉にする天才でした。自分は俳優であって、映画俳優と名乗るのはおこがましい、とも言ってました。銀幕のスターが出尽くした後、テレビから出てきた男だから、スターはスターでも、サンスターだと冗談言ってましたよ。喉の調子がわるくて、朝晩2回、スチームで喉をいたわってました。声が裏返るのはわざとじゃなくて、加齢によるものですよ」 本コラムでは、心に残る事象を拾っていきます。ご愛読のほどを。 (本橋信宏/作家)