ひと足先に紅葉の見頃を迎える「新穂高ロープウェイ」へ行こう!新エリア「頂の森」もグランドオープン
岐阜県高山市奥飛騨の「新穂高(しんほたか)ロープウェイ」は、北アルプスの絶景とあざやかな紅葉が楽しめる秋の人気スポットだ。例年では9月下旬ごろから標高2156メートルの山頂が徐々に色づき始め、約1カ月かけて山全体が紅葉する。なお今年は猛暑の影響か、山頂が色づき始めたタイミングは例年よりやや遅れたようだ。 【写真】標高差のある山岳地帯でしか見られない「三段紅葉」 秋が深まると、標高差のある山岳地帯でしか見られない「三段紅葉」に出合えることも。これは、山の稜線が冠雪して白く覆われ、中腹ではカエデやナナカマド、ブナなどの木々が赤や黄色に色づき、低地では緑色の樹木という、3色の景色が同時に楽しめるというもの。わずかな期間に出現する、貴重な絶景だ。 新穂高ロープウェイでは、紅葉のピークシーズンに先駆け、2024年10月11日(金)に山頂エリアが「頂(いただき)の森」としてグランドオープン!そんな注目の新穂高ロープウェイを9月下旬に取材。新エリアの見どころやおすすめのグルメ、土産などを紹介しよう。 ■北アルプスの山々を気軽に満喫できる新穂高ロープウェイ 新穂高ロープウェイは岐阜県北西部、高山市の奥飛騨温泉郷を構成する5つの温泉地の1つ、「新穂高温泉」にある。隣接した長野県との県境も近く、西穂高岳や笠ヶ岳といった北アルプスの山々を目指す登山者の出発点としても利用されている。 ロープウェイは2区間で構成され、第1ロープウェイは、スタート地点である標高1117メートルの「新穂高温泉駅」から、標高1305メートルの「鍋平高原駅」まで進む。さらに、第2ロープウェイは鍋平高原駅から徒歩3分ほどの距離にある「しらかば平駅」と、山頂の「西穂高口駅」を結ぶ。2つの区間を乗り継ぐことで、全長約3200メートルの空の旅が楽しめる。なお、「しらかば平駅」から第2ロープウェイのみに乗車することも可能だ。 ■ロープウェイに乗っていざ空中散歩へ!気になる紅葉は… 第1ロープウェイの全長は約570メートルと比較的短く、乗車時間も4分程度。しかしロープウェイとしては日本一という38度の急勾配の区間があるので、スリルは満点だ。 このエリアでは、全面ガラス張りの車窓から紅葉に染まる木々を間近に見ることができる。9月下旬の取材時点では、この区間で見られる木々はまだ青葉が中心。色づき始めた木の姿もぽつぽつとあった。ちなみに、運がよければニホンカモシカやツキノワグマなどの野生動物の姿を見られることも。実際、取材時にもニホンカモシカを見ることができた。 第2ロープウェイでは、日本で唯一となる2階建てのゴンドラを採用。1階と2階、空いていれば好きなほうを選ぶことができるが、どちらからも同じように絶景を楽しめる。 しらかば平駅から西穂高口駅までは全長約2600メートル、高低差は約850メートルだ。ゴンドラが動き出すと、進行方向の左側に槍ヶ岳や西穂高岳、右側には焼岳などの雄大な山々が目の前に迫ってくる。 運行中は、車内アナウンスで車窓から見える山々の解説が流れる。山岳情報に耳を傾けながら、約7分間の空中散歩を楽しもう! ■大自然を身近に感じられる散策エリア「頂の森」 今回グランドオープンした「頂の森」は、西穂高口駅に隣接する散策エリアだ。「世界屈指の北アルプスでありのままの自然に五感でふれる」をコンセプトに、2020年から段階的にリニューアル工事が進められ、2022年10月に一部が先行して開業した。そして今年9月に「オオシラビソの道」と「西穂の踊り場」が完成。ここに10月11日、新たに「ゴンドラステージ」が加わることで、グランドオープンに至った。 「ゴンドラステージ」は西穂高口駅のすぐ横にあり、白山方面やゴンドラが発着する様子を眺めながらのんびり過ごせるスポット。屋外劇場をイメージしたカーブを描くベンチが配置されており、イベントなどの会場としても活用される。 「オオシラビソの道」は、原生林を間をゆったりと歩ける散策路だ。「オオシラビソ」とは、標高1600~2400メートルの亜高山帯で育つ、貴重な常緑針葉樹。木々の香りを感じながら、森林浴を楽しもう。 また、「西穂の踊り場」には、壮大な穂高連峰を眺められるデッキがある。デッキの背後には山頂標識をイメージした撮影スポットが設置され、山頂に到着した気分で記念写真を撮ることができる。 2022年の開業以来人気なのが、槍ヶ岳や穂高連峰を間近に感じられる展望デッキ「槍の回廊」だ。デッキがブーメランのように山の斜面に張り出しており、さらにその先に立ったり座ったり寝転んだりできるネットがある。ちょっとしたスリルとともに、北アルプスの大パノラマを全身で体感しよう。なお、ネットの隙間から私物を落とさないよう要注意だ。 「槍の回廊」の裏手には、木々に囲まれながら食事や休憩などができる「森のテーブル」が設置されている。 そのほかにも、ドリンク片手にロープウェイの発着や白山方面が眺められる「森のカウンター」、原生林に囲まれた「森のテラス」、並んだ丸太の上で遊べる「丸太渡り」など、森を満喫できるポイントが点在。新穂高の大自然を五感で楽しむことができる。 ■ミシュランが認めた360度の大パノラマビュー 西穂高口駅の屋上には展望台があり、晴れた日には北アルプスの山々が一望できる。ここからの眺望は「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」に2つ星として掲載されたのだとか。世界が認めた360度の大パノラマビューは必見だ。 この展望台に設置されている「山びこポスト」は、通年集荷されるものとしては日本最高所にあるポスト。ここから家族や友人、もしくは自分宛に絵はがきや手紙を出すのも、いい記念になりそうだ。 ■西穂高口駅でしか手に入らないレアアイテムに注目 西穂高口駅3階の売店「MEGUMI(めぐみ)」は、今年4月にリニューアルオープンしたばかり。アウトドアブランド、モンベルとのコラボアイテムが人気の「頂」シリーズや、雑貨、菓子などを販売する。ポストカードと切手の取り扱いがあるので、ここで購入して手紙を書き、「山びこポスト」に投函することも可能。オリジナルの木製はがき「ハガ木」(390円~)もおすすめだ。 また、「頂の森」整備時に環境省の特別な許可を得て伐採されたオオシラビソを活用した、オープン記念の限定グッズにも注目。オオシラビソの枝葉を高圧水蒸気蒸留法で抽出した100%天然・無添加の「エッセンシャルオイル オオシラビソ」(3800円)や、「オオシラビソディフューザー」(980円)など、希少なアイテムがそろう。 西穂高口駅4階にある喫茶・軽食「マウントビュー」では、地元の食材をふんだんに使ったメニューを用意。飛騨高山の人気中華そば店「豆天狗」が監修した「飛騨牛高山ラーメン」(1600円)や、「飛騨牛カレー」(1600円)などの食べ応えのある食事メニューはもちろん、「頂チュロス」(510円)や「頂ソフト」(ミルク、桃 各710円)といった「頂」シリーズも人気だ。 一部のメニューはテイクアウトが可能なので、「頂の森」のテラスやベンチなどで山々の空気とともに味わうのもいいだろう。 ■しらかば平駅で焼き立てパンと足湯を楽しむ しらかば平駅2階にある「アルプスのパン屋さん」では、焼き立てのパンが味わえる。ビューラウンジと名付けられた店内は新穂高の森をイメージした明るい内装で、約70席と広々。窓際にはソファ席も設けられており、大自然を眺めながらゆったりと過ごせる。 1番人気は「クロワッサン」(254円)で、バターの香りとサクサクとした軽い食感が好評だ。オリジナルのゴンドラの焼印をした「ゴンドラ食パン」(509円)は、土産として購入する人が多い。「アルプスのプリン」(407円)は、地元の飛騨牛乳を使用した濃厚な味わいとなめらか口当たりが特徴。ロープウェイの待ち時間に利用する客だけでなく、ここで見られる景色とパンを目的に訪れる人もいるのだとか。また、ここで購入した商品をテイクアウトして、山頂などで味わうのもおすすめだ。 しらかば平駅のすぐ横には、足湯「神宝乃足湯」がある。頭上に第2ロープウェイのゴンドラが行き交うめずらしいロケーションで、ゆったりリラックスして旅の疲れを癒やそう。 ■紅葉や雪景色、星空…何度でも足を運びたい 春と秋には期間限定で「星空観賞便」が運行する。今秋は9月下旬から実施されており、今後も2024年10月25日(金)~27日(日)と11月1日(金)~4日(祝)に運行される予定。街の灯りが届かない大自然に囲まれた展望台は、星空観賞に絶好の場所だ。天候条件がそろえば、きらめく満天の星に出合える! 「頂の森」のグランドオープンでますます注目が集まっている新穂高ロープウェイ。紅葉が美しい秋は特に人気のシーズンだが、一面が真っ白な雪に覆われ、幻想的な風景が広がる冬もまた格別だ。そして雪解けの春を迎えると銀世界が新緑へと移り変わり、夏は涼やかな避暑を楽しめる。それぞれの季節に異なる魅力があり、何度も足を運びたくなるだろう。 なお、山頂エリアは麓と比較すると気温がぐんと下がる。西穂高口駅屋上展望台周辺の気温は、新穂高ロープウェイの公式サイトに掲載されているので、事前に確認しておこう。体温調節のために、着脱しやすい上着やストールなどを持参するのもおすすめだ。また紅葉の色づき情報も同様に公式サイトにアップされているので、おでかけの予定を立てる際の参考にしてほしい。 【取材・文=前田智恵美/撮影=古川寛二】 ※記事内の価格は特に記載がない場合は税込み表示です。商品・サービスによって軽減税率の対象となり、表示価格と異なる場合があります。