がれきは放置、下水垂れ流しでも「見せかけの復興」…「ソ連時代に逆戻り」陥落から一年 マリウポリの今
■ロシアへ連れ去り…1万人が行方不明
ロシア支配地域では、ロシアによる「子供の連れ去り」が大きな問題となっている。アンドリュシェンコ氏は、子供だけでなく多くの大人の住民の安否も不明だという。 ーロシアへの連れ去りの実態は? 占領された当時から「選別センター」が設置され、私たちの計算では約1万人のマリウポリ市民が拘束されてロシア国内の様々な刑務所に散らばっています。彼らの安否について、残念ながら何もわかりません。去年10月頃までは解放された人がいたため、居場所をどうにかして追跡できていましたが、今は行方不明です。子供については、ロシア側の発表によると、1300人の子供がマリウポリからロシア側に連れ去られました。ただ、実際に連れ去られた人数や拘束された人々の安否については、マリウポリを奪還しない限り、残念ながら知る術がありません。
■「マリウポリは死んでいる」…再建に向けて日本に求めることは?
アゾフスタリ製鉄所から最後の兵士が投降してから18日で1年となる。ロシアの侵攻以来、ウクライナ各地を転々としながら、SNSなどでマリウポリの情報発信を続けてきたアンドリュシェンコ氏に今の思いを聞いた。 ーこの一年間、どのように過ごしてきましたか? この一年は、まるで1日のように過ぎました。ずっと戦っていました。最初は町を守るため、そして民間人を避難させるために戦いました。今は奪還のために戦っています。感情を自分の中で抑えていますが、怒りの気持ちしかありません。親族や友人、前線で戦っていた多くの同志も失い、捕虜になってる人もいます。我々は勝利して、帰還できる日を首を長くして待っています。去年の5月18日から、我々にとってのマリウポリは存在しなくなりました。今あるのはマリウポリではなく、「ジダーノフ」(ソ連時代のマリウポリの呼称)だと、私たちは言っています。現在、マリウポリは死んでいるのです。それをどのように再建すればいいか、私たちはすでに考えています。奪還に成功したら、より良い街作りを目指して復興します。 ーG7(主要7か国首脳会合)が開かれます。日本やG7諸国に求めることは何ですか? まず、日本に、そして世界に、支援へのお礼を言いたいです。それがなければ、私たちはきっと耐えられなかったでしょう。また、マリウポリ奪還後、街の復興を始める時、力を貸してくれることを期待しています。ロシアという危険な隣人を持っている日本に関しては、北方領土が早く取り戻せるよう祈っています。我々は可能な限り力になっていきます。私たちは共通の敵を持っているからです。日本は、広島と長崎の原爆を経験していて、何のためにあれだけの規模の犠牲者が出なければならなかったのかということの認識と理解は、私たちの共通の痛みです。私たちは皆様に感謝し、両国間で成果のある協力関係ができるよう願っています。