がれきは放置、下水垂れ流しでも「見せかけの復興」…「ソ連時代に逆戻り」陥落から一年 マリウポリの今
■壊れたままの下水システム…進む環境汚染
かつては製鉄や海運業が盛んな工業都市だったマリウポリ。最後までウクライナ側の拠点となっていたアゾフスタリ製鉄所だが、ロシア側の攻撃で甚大な被害を受けた後そのままになっていることが、新たな環境汚染を引き起こしているという。 ー町の衛生状態はどうですか? 冬は気温が下がったおかげで多少の改善が見られましたが、夏に向けて気温の上昇と共に、衛生状況はまた悪くなります。市内の下水システムが壊れているためです。ロシア側は下水ポンプ・ステーションを稼働させたと言っていますが、それは事実かどうか不明ですし、稼働させたとしても、1つだけのポンプ・ステーションでは下水システムの代わりになりません。そのため、今は排泄物の川が直接海に流れ込んでいます。さらに、アゾフスタリ製鉄所では、攻撃を受けた後、たくさんの化学物質が地下水に流れ込み、環境汚染が進んでいます。このような環境汚染が人体に及ぼす影響は、強力かつ長期的なものです。また、その化学物質はアゾフ海から黒海に流れ込み、そこから太平洋などに広がっていくことで、地球全体の環境問題を引き起こします。これが今、ロシア人がやっていることです。
■ソ連時代に逆戻り…進む「ロシア化」教育
5月9日には、マリウポリでもロシアの「戦勝記念日」のイベントが行われた。ロシアによる占領以降、学校教育や、報道、町の中の芸術作品に至るまで、歴史上の出来事の塗り替えが行われ、じわじわと「ロシア化」が進んでいるという。 ーロシアの戦勝記念日には何が行われていましたか? 何も行われていません。動画を撮影するために子供や献花をする人々が集められました。祝っている人の90%が占領当局のために働いている親ロシア派住民か、マリウポリに移住したロシア人です。ロシアやドネツクから車両がやってきて、多くの人々が戦勝記念日を祝っているという大きな「幻想」を作り上げようとしました。 ー教育はどうなっていますか? 学校教育では、毎日のようにロシアの洗脳が行われています。ヨーロッパ式のウクライナの教育はなくなり、ロシア語教育が導入されています。多くのものがソ連時代に逆戻りしました。私自身が子供の頃はソ連時代だったので、どのような教育を受けていたのかよく覚えています。ウクライナの歴史を歪めて、以前あったことは「事実ではない」と教えています。子供のうちにこのような教育をすることはかなり効果的で、もし我々が今後マリウポリを奪還できても、この教育プログラムがもたらす結果は長い間影響することになります。さらに、破壊された家にあったウクライナ語の看板をロシア語のものに取り換えたり、ウクライナ時代に作られた芸術作品の壁画もロシアのものに変えられました。街中にあるポスターや新聞などあらゆるものが、洗脳の目的で使われています。