織田信長ゆかりの城下町で古い町家再生、若者の出店や移住後押し 住民主体のまちづくり会社、景観守り、にぎわい復活へ【地域再生大賞・受賞団体の今】
織田信長が拠点とした岐阜城の城下町として栄えた通称「岐阜町(ぎふまち)」(岐阜市)の伝統的な景観と町家を守ろうと、住民が運営するまちづくり会社が奮闘している。リノベーションや不動産仲介を通じて、空き家の持ち主と、まちに引かれて出店や移住を希望する若い世代とをつないでいる。最近は飲食店などの開業が相次いでおり、人口減少や高齢化で失ってきたにぎわいが徐々に戻りつつある。(共同通信=藤田康文) 【写真】「ミスコンテスト」未婚女性がPR役… 理想の花嫁探しの場だったから? 性別不問にした山形の「ミス花笠」、でも結局男性は選ばれず
▽現代の「家持町人」 岐阜城がそびえる金華山のふもと、伊奈波神社の参道に沿った岐阜善光寺で今年6月、まちづくり会社「岐阜まち家守(やもり)」の山本慎一郎社長(49)が羽織はかま姿で、「岐阜町家持(いえもち)町人」と記された手形を贈った。受け取ったのは家持町人の第1号となった岐阜市出身の武蔵野大教授、秋元祥治さん(44)だ。 岐阜まち家守は、岐阜町周辺を活性化するために空き物件を買い取って改修し、入居するテナントを見つける。その上で、物件への投資家である「家持町人」に売却する仕組み。家持町人という呼び方は、江戸時代に屋敷を構え、まちづくりに発言力を持った格の高い町人の呼称にちなんだ。 ▽地域に貢献したい 会社は投資家から物件を借り上げて管理し、テナントに「また貸し」する。会社は売却益やテナントからの管理費を、投資家は家賃収入から利回りをそれぞれ得る。 秋元さんがオーナーとなった第1号物件は伊奈波神社の参道に近い空き店舗で、テナントとして紅茶専門店の倉庫が入る。
秋元さんは出資した動機を「単に投資物件としてではなく、地域の活性化に貢献したいという思いをいくらかでも実現できる」と語る。岐阜まち家守に対しては「経済合理性と地域への思いがうまく重なり合い、地域活性化の後押しになるような取り組みと、その加速に期待している」と共感を示した。 ▽風景が失われた 50近くの寺社があり、毎正時に鐘の音が響き、心和む風情が感じられる岐阜町。切り妻造りの屋根や格子があしらわれた壁といった伝統工法の町家が点在。ちょうちんなどの伝統工芸が残り、長良川の鵜(う)飼いなどの観光資源に恵まれている。 だが、地元の油問屋の4代目で、岐阜まち家守社長の山本さんは岐阜町の風景が「加速的に失われてきた」と危機感をあらわにする。 ▽高い空き家率 かつての伊奈波神社参道は両側に店が軒を連ね、まるで百貨店のように何でもそろった。ところが、山本さんは「1990年代後半から2000年代前半に店はどんどんなくなっていった」と振り返る。