織田信長ゆかりの城下町で古い町家再生、若者の出店や移住後押し 住民主体のまちづくり会社、景観守り、にぎわい復活へ【地域再生大賞・受賞団体の今】
1995年に約1万3千人だった岐阜町の人口は2020年には8千人弱まで落ち込み、高齢化も進んだ。 参道周辺の空き家率を会社が調べたところ、27・5%と全国平均の約2倍だった。大都市で就職した子どもが戻ってこないなどの理由により、昭和30年以前に建てられた町家や木造家屋のうち約20%が過去5年間に取り壊された。 ▽住民が出資、実績上げる 岐阜まち家守は危機感を背景に、住民や地元企業が出資して2021年11月に設立された。メンバーは5人おり、副社長の蒲勇介さん(44)は長良川流域の地域づくりを支援するNPO法人「ORGAN」の理事長も務める。 山本さんや蒲さんらは会社設立前から、空き物件の持ち主と開業希望者を橋渡ししてきた。 トラブルを恐れて地域外の人に空き家を貸すことをためらう住民も多い中で、会社は地元の信頼を得て実績を上げてきた。 空き物件を活用したビール醸造所が誕生した。築100年を超える民家を借り受けて改装し、また貸しする形で天むすやベトナムのフォー(米の麺)の店に入ってもらうと繁盛するようになった。別の空き家も食堂などに再生した。
こうした取り組みを知り、「そんな風に活用できるなら」と建物を格安で譲ってくれた住民もいる。 ▽持続可能なビジネス ただ、小規模経営の岐阜まち家守にとって事業の課題は多い。 改装工事には多くの費用がかかり、投資分を回収するには時間がかかる。自社で多くの物件を所有する資金力はない。その一方で取り壊しの危機にひんする物件は増えており、時間的な猶予はない。 そこで取り組むことにしたのが、「家持町人」というスキームだ。 蒲さんは「不動産改修のコストを心ある投資家に持っていただく。会社は得た費用を次の投資に充てることができ、持続可能なビジネスモデルだ」と狙いを語る。 第1号の事例が報じられると「応援したい」「まちづくりに関わりたい」と5件の問い合わせがあった。 ▽手応え 参道を歩行者天国にして飲食や雑貨の店が多く出店するイベントや、空き家ツアー、ワークショップにも力を入れている。