復活したホントの1号車 最初のベントレーTシリーズ(2) ミラーレスの完全オリジナル
V8エンジンはリビルド不要だった
ベントレーの広報担当、ウェイン・ブルース氏とマイク・セイヤー氏は、当時のCEO、エイドリアン・ホールマーク氏に倉庫を見てもらった。「彼は、その状態に憤慨していましたね。復活させることになった、きっかけの1つです」。セイヤーが説明する。 【写真】シルバーシャドーのエンブレム違い ベントレーTシリーズ 先代のS1 現行モデルも (132枚) 社内で情報を確かめると、経験の浅いチームが、2016年10月にこの1965年式ベントレーT1のレストアへ着手。しかし別の仕事が優先され、保留状態になっていたことが判明した。 「かなりの仕事が必要だと判断しました。仕上げるには、弊社モデルのレストアを得意とするパートナー企業、P&Aウッド社の協力が不可欠でした」。ところが、分解してみると全面的な作業までは必要なかったらしい。 「驚いたことに、エンジンはリビルド不要だったんです。ガソリンを注いだら、ほぼ一発で始動したんですよ」。セイヤーが笑う。それでも、希少な最初のT1を完全に仕上げるため、部品取り車が用意された。 ボディは地金へ戻され、サビを徹底的に除去。オリジナルのシェル・グレーで仕上げられた。劣化が想定される機械関係は交換。天井の内張りには、オリジナル通りレザーが用いられた。
本当にモデル・シリーズの1番目の車両
「まだ歴史の詳細は不明です。しかし、アメリカに存在していたことは間違いありません。最初のシルバーシャドーより先にラインオフしているので、本当にこのモデル・シリーズの1番目の車両に当たります」 「ディーラーでの発表イベントでは、リーガル・レッドに塗られたロールス・ロイス・シルバーシャドーと、一緒に並んだはずです。1965年のプレス向け写真にも用いられたと考えています。モーターショーへの展示は不明ですが」。ブルースが続ける。 「ラインオフは1965年9月28日。英国のモーターショーは10月だったので、出展された可能性はあります。当初のナンバープレートは、85TUでした。一方で1900TUもTシリーズの撮影に用いられており、このクルマへ相応しいと考えました」 「聞いた話では、2人前の前任者、リチャード・チャールズワースさんがアメリカ・ビバリーヒルズの老婦人から購入したようです」。とブルース。「イエス!」。セイヤーが強く同意する。 「相当な金額が投じられましたが、初のモノコック・ベントレーとして極めて重要なクルマです。また、ベントレーのエンブレムが付いたロールス・ロイスであることも否定はできません。シートベルトのバックルにも、RRのロゴが付いているんですよ」 「貴重な歴史の一部です。自分とブルースにとっても、重要な意味を持つものになりました。デザインのDNAがどう変化してきたのか、多くの人に鑑賞してもらえる日を、楽しみにしています」。セイヤーが続ける。