ナレンドラ・モディ首相と習近平国家主席（ロシア中部カザンで、２３日、インド政府提供）＝ロイター

　【カザン（ロシア中部）＝浅野友美、東慶一郎】中国の習近平（シージンピン）国家主席とインドのナレンドラ・モディ首相は２３日、ロシア中部カザンで会談した。両首脳の公式な会談は２０１９年以来、５年ぶり。２０年に国境地帯で衝突し、両軍に死傷者が出てから冷え込んでいた関係を改善することで一致した。

　会談は、両首脳が出席した中露印などで構成するＢＲＩＣＳの首脳会議に合わせて行われた。モディ氏は会談で「この４年間に国境で生じた問題を巡り合意したことを歓迎する。国境の平和と安定の維持は最優先事項だ」と述べた。中国外務省によると、習氏も「双方が意思疎通を強化することで意見の相違を適切に管理し、互いの発展のために協力すべきだ」と応じた。

中印関係の近年の経緯

　中印間では１９５０年代から続く国境画定を巡る争いが長期化している。２１日には印側が、中国との間で事実上の国境となっている実効支配線での巡視の取り決めについて合意したと明らかにしていた。印政府によると、両首脳は国境問題に関する両国の特別代表が早期に会合を開くことで一致した。

　印紙エコノミック・タイムズによると、今年４～９月のインドの輸入元では中国が最大で、貿易面の依存度は高い。スブラマニヤム・ジャイシャンカル外相は９月、「インドは中国とのビジネスに門戸は閉ざしていない」と述べており、投資を呼び込みたい思惑が透ける。

　インドは日米豪と「Ｑｕａｄ（クアッド）」を構成し、中国の海洋進出を念頭に海上共同訓練にも参加している。中国側には、インドに接近することで米国などとの連携を崩す意図があるとみられる。インドは最近、国連安全保障理事会の常任理事国入りに意欲を強め、中国以外の常任理事国から支持を取り付けた。最後のハードルとなっている中国に少しでも歩み寄り、理解を求める狙いもありそうだ。

　一方で中国は、台湾の対外窓口機関にあたる代表処が印西部ムンバイに今月新設されたことに不快感を示していた。習氏はモディ氏に対し、台湾問題で「一つの中国」原則を順守するよう求めるとみられる。