1975年の優勝シーズンに重なる球宴での赤ヘル旋風
華やかなオールスター戦の舞台を赤いユニホームがジャックした。 8人が選出された広島カープが、第1戦の全セのスタメンの5つのポジションを占めた。センター・丸佳浩、レフト・エルドレッド、一塁・キラ、二塁・菊池涼介、三塁・堂林翔太。西武ドームのスタンドにも“カープ女子”と呼ばれる広島ファンの姿が目立った。 全セの先発マウンドに立った前田健太は、「これだけチームメイトが多いと、去年までのオールスターと違って不思議な感じがする。レギュラーシーズンみたい」と感じていた。そして1、2番コンビを組んだ丸と菊池には、冗談か本気かわからぬ口調で、「先制点を取らないと殺すぞ!」と脅しをかけていたという。 全セの先制チャンスは、3回一死からの堂林のレフト前ヒットから始まった。二死一、三塁で、菊池に打席が回ってきた。「僕はでかいのが打てないので渋いヒットでいい」。菊池はセンター前へと先制タイムリーを刻む。チームのエース指令に応え、これで殺されずに済んだと苦笑いである。鳥谷敬に続き、エルドレッドも連続タイムリー。広島勢の活躍でオリックスの西勇輝から3点を先行した。 前田健も、そう言った手前、ピッチングで恥はかけなかった。1、2回とパーフェクトに抑えていたことから、「もう1イニングいくか」と、声がかかって予定外の続投をしたのはいいが、二死満塁の大ピンチを背負うことになった。「最後はバテました(笑)。早く終わらせたかったんですが」。糸井の本塁打を狙うかのようなフルスイングも、球威に押され、レフトの定位置まで走りこんできたセンター丸のグラブに収まった。カープ旋風は、まだ続く。 7回には二死二塁から、自打球を足に当てバッターボックス内ででひっくりかえったエルドレッドが、仕切り直しのひとふりで、クロッタの外角低目の難しいボールを右中間スタンドまで運んだのである。「自打球をやって足が痛かったのだが、それがあったので、とにかくコンパクトに振ろうと考えていた。しっかりと振り抜けた良いホームランだった。ダイヤモンドをゆっくりと走っている最中は痛みを忘れていたよ」。