1975年の優勝シーズンに重なる球宴での赤ヘル旋風
オールスター第一戦は、3安打4打点で、MVPを獲得。試合前に行われたホームランダービーでも、バレンティンを決勝で破って優勝し賞金50万円をゲット。セ・リーグの本塁打、打点の2冠王は、シーズン中のバッティングの好調さをそのまま夢舞台に持ち込んだ。「初めてのオールスターで、パ・リーグを代表する投手から、こんな結果を残せたのは非常に大きいと思うし、良い経験になった」。 5時間39分の引き分け試合となった14日の横浜DeNA戦では、プロ野球ワースト記録となる6つの空振りの三振でチームの足を引っ張った。ワンバウンドするようなボール球に手を出して、まるで去年までのエルドレッドを見ているような無気力な一面をさらけだして「真の4番打者ではない」との批判も受けた。だが、翌日には、気分を切り替えて2安打2打点でチームの勝利に貢献した。それは責任感の裏返しだった。カープの4番には、技術的にも精神的にも、安定感が生まれている。 また7回裏には、二死から全セの原監督が、故障で戦列を離れていた元巨人の一岡竜司に打者一人だけの復帰登板を任せる憎い演出をした。その一岡は、大引啓次をサードゴロに打ち取った。広島にとって中継ぎエースの復活も大きな収穫だった。 かつて、球宴で1試合3本塁打の記録を作ったことのある阪神DCで、評論家の掛布雅之氏は、1975年の赤ヘル旋風の再現を見ているように感じたという。「昭和50年(1975年)に甲子園で行われた球宴で、広島の山本浩二さんと、衣笠祥雄さんがアベックホームランを打ったんです。赤ヘルの時代を象徴するような球宴で、そのままの勢いで後半に突入して逆転優勝をしました。私は、今回の球宴の広島勢の溌溂ぶりに、ふと、あの時代を思い出しました。交流戦から投手が先発、中継ぎと崩れリズムを失いましたが、この球宴をきっかけに後半のカープが、また勢いを取り戻す可能性があります。怖いと感じさせましたよ」。