<W杯>ブラジル美女「母国と日本どっちも応援」 群馬の“ブラジルタウン”ルポ
企業城下町から「ブラジル」を観光資源に
大泉町はもともと軍用機を作っていた中島飛行機の企業城下町で、戦後もその流れをくむ富士重工、そして三洋電機(パナソニック)の大規模な工場が町を支えてきた。ブラジル人住民の多くはこうした工場で働く労働者だ。 今年4月末の統計によると、大泉町の人口は4万895人。そのうち、3952人がブラジル人だ。ブラジル人以外にも、ペルー人を筆頭に中国、ネパール、フィリピン、ボリビアといった外国人が2200人余り在住している。「10人に1人はブラジル人」という表現は決して大げさではなく、それどころか、統計に現れない配偶者などを含めれば実数はもっと多いと思われる。 在住ブラジル人の多くは日系だ。アルバイトで稼ぐいわゆる出稼ぎの外国人労働者と違い、日系ブラジル人は主として派遣・請負などの雇用形態で製造業に就いている。日系であればそれを可能にする「定住者」の在留資格が得られるからだ。ブラジルには日系人が多いため、入管法がそのように改正された1990年ごろから、大泉町のような企業城下町を中心に全国的にブラジル人が増えた。ちなみに、日系と言っても、3世や4世が多く、あるいはその家族には日本の血が入っていない人もおり、日本的な顔立ちであるとは限らない。 一方、「ブラジル」が大泉町の観光資源となったのは割に最近のことだ。2007年に町の歴史で初めて観光協会を設置し、ブラジル人スタッフを置いて「ブラジルタウン」としてPRを始めた。最近では、はとバスや大手旅行会社のツアーも組まれるようになったという。サンバパレードを中心とした『大泉カルナバル』は、毎年恒例の大規模なイベントだ(今年は9月13日に開催)。
ブラジル人向けの店で「日本にはない」を楽しむ
観光協会のブルナさんは、「個人的には、誰でもだいたい同じ物が持てる日本は平等で素晴らしいと思います。格差社会のブラジルには戻りたくない。でも、ブラジル人は皆そうですが、生まれ故郷への誇りやアイデンティティは強く持っています」と話す。それが具体的に形となって表れたのが、町を席巻するブラジル人向けの店や施設だろう。 まず、中心部の商店街にある老舗レストラン、その名も『レストラン・ブラジル』で昼食をとった。店長の岩田ダニエルさんのオススメは、「エスペトン・デ・ピカーニャ」。牛モモの貴重な部位のシュラスコ(牛肉の串焼き)だ。「フェイジョアーダ」(豆や肉、ソーセージなどを煮込んだ家庭料理)や「ビフェ・ア・パルメジャーナ」(牛カツレツをトマトソースとチーズで包んだイタリア系ブラジル料理)も追加。ブラジル料理はとにかく「肉!」なのだが、リーズナブルな価格でこれほどしっかりと肉を味わえるジャンルは、ちょっとほかに思いつかない。