うかつな経済対策で予期せぬ事態に、「愚民政策」の結果に苦悩する中国政府
そして人々は、マンションの価格は一戸が2000万円から3000万円はすると思っている。一級都市の中心部では1億円以上すると考えている。その金額を当てはめると、人の住んでいないマンションの時価総額は単純計算で4800兆円から7200兆円になる。それは住宅ローンなどを通じて金融機関につながっており、不良債権を生む原因になっている。 一戸に3人が住むと仮定すると、農村部に住む9億人の中の7.2億人がこのマンションに越してくれば、中国の空きマンション問題は解決する。だが中国の奇跡の成長が農村に住む人々の犠牲の上に成り立ってきたことを忘れてはならない。農村に住む人々の年収は日本円で100万円に満たない。生きて行くだけでやっとだ。貯金はほとんど持っていない。そのような人々がどうやって2000万円から3000万円もするマンションを買うことができるのであろうか。 そして農民が都市部に移り住んだとしても職がない。現在、大学を出た若者でも就職に苦労している。つまり今後、都市部の空き家に人が住むことはない。そう考えれば、空き家の価値はゼロだ。知人は、将来取り壊しの費用が必要になるので、実質価値はマイナスだと言って笑っていた。 欧米のエコノミストは、住宅価格が下落すれば不動産市場において需要と供給が均衡し、経済が再び成長軌道に乗ると考えるが、中国ではそのようなことは起きない。ここに中国の不良債権問題の本質がある。つまり解決不能なのだ。知人はため息をついた。 ■ 不良債権の山を現在も築き続けている地方政府 日本では報道されないが、もう一つ重要なことがある。それは今もマンションが造り続けられていることだ。
地方政府は農民から土地を取り上げて、マンションを建設しなければ生きて行けない。もちろん以前のような調子ではないが、それでも建設している。現在も不良債権の山を築き続けている。それについて中央政府は見て見ないふりをしている。 GDP全体に占める不動産部門の割合が3割と言われた国である。地方政府が土地開発を行うことを完全にストップさせると、今以上に街に失業者が街にあふれ出す。また地方政府と組んで不動産開発や建設業を営んできた人々は強い力を持っており、中央政府はそのコントロールに手を焼いている。財政出動や金融緩和は彼らを生き返らせることにつながる。 国慶節の連休中、新たな口座を開設したいという人の要望に応えて、一部の証券会社は休日返上でフル操業した。儲け話があれば、金融機関が休日を返上して対応する。それが中国という国である。 多くの人が、これをチャンスと見てレバレッジをかけた投資を行った。だが実態経済は回復していない。そんな投資は半年もすれば、すべてが失敗に終わるだろう。それが分かり切っているのに、証券会社の人はなにも言わない。株式評論家はもっと上がると囃(はや)すだけだ。