三菱重工、出戻り大歓迎で応募殺到 退職者は「悪者」じゃない
コミュニティー導入には条件
一方、23年10月に「採用直結型」のアルムナイ採用を導入したのが三菱重工業だ。リクルートのカムバック採用代行サービスを導入。退職者が専用サイトに登録すれば経験に合った求人案件を見たり、コーディネーターに相談したりできる。導入後、予想以上に登録が殺到。半年もたたないうちに数百人が登録し、すでに数人に内定を出した。専門性の高さからか航空部品などの部門が多かったという。 同社は年150人規模のキャリア採用計画の3分の1しか達成できない年もあるなど「キャリア採用は弱かった」(HR戦略部上席主任チーム統括の福岡祐一氏)が、サイトの発信情報も工夫し、アルムナイ採用の定着を狙う。 アルムナイコミュニティーは海外が発祥で、世界78カ国に30万人以上のネットワークを持つ米アクセンチュアの事例などが有名だ。日本でも三井物産など総合商社においてビジネスを支え合う仕組みとして存在したが、「ここ2年ほどで一気に採用手法としての側面が注目された」(ハッカズークの鈴木氏)。一定以上のエンゲージメントがある組織で機能するため、退職者を「悪者」「異分子」などとしない風土づくりが重要だ。 その意味でコミュニティーの安易な導入は避けたい。エンゲージメントが低い会社だと人が集まらず、エンゲージメントの低さを露呈するだけになりかねない。「求める人数が多くなければ、社長が代表メッセージに『アルムナイ歓迎』と書くだけでも十分意図は伝わる」(導入企業)との声もある。 「あなたの今後のキャリアについて、ディスカッションしませんか」──。人材紹介会社などを介さず一般の求職者に直接アプローチする手法も増えている。特にSNSで応募者を募る「ソーシャルリクルーティング」では、米リンクトインの存在感が高まっている。 ●欲しい人材、SNSで一本釣り 日本法人リンクトイン・ジャパン(東京・千代田)の田中若菜代表は「企業が欲しているデジタル人材が多く登録している」と強みを語る。自身もリンクトインで連絡を受け、米グーグルの日本法人グーグル合同会社の執行役員から転身した。 職歴やスキルを登録して交流するビジネス特化型SNSとして、米国では早くから転職に使うツールだった。日本でも転職者の増加やリスキリング(学び直し)への意識の高まりで登録者が増加。生成AI(人工知能)などの学習コンテンツを独自に増やしている戦略も奏功し、国内登録者数は400万人に達する勢いだ。 人事担当者が利用する場合、採用機能は定額課金制。スキルや職歴など、条件を設定して自社にマッチしそうな人を探し、本人にダイレクトメールを送る。経験だけでは選択肢が狭まるため、AIが検索を支援する。関係するスキルを学習中の人や、フォロー傾向からその会社に興味がありそうな人などを、候補として提案するといった機能を備える。